肌ざわりの表現に戸惑う

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 温泉は「泉温」・「液性」(ph値)・「浸透圧」で分類されるが、入浴感覚は「成分」を含めた印象なので表現にばらつきがある。どういうわけか「さらさら」、「すべすべ」、「つるつる」、「ぬるぬる」という反復する言葉が多い。また、「しっとり」、「ねっとり」、「あっさり」という表現もあるがこちらは裏解釈が伴うから避ける。

ぬめり

 我が家では、温泉のややねっとりした肌の感触を「ぬめり」と表現するがこれも他人にはわかりにくいだろう。この中で「ねっとり」って何だと突っ込まれると回答に窮する。「べたべた」というほどしつこい粘りでなく、かといって「さらさら」というほどあっさりしない中位の「ぬるぬる」という感触の表現である。この「ぬめり」の濃淡が温泉に入ったという実感なのだが、希薄だから悪いとか濃いから良いというものではない。これは温泉に含まれる成分がもたらすのだろう。

さらさら、すべすべ

 入浴中だけでなく湯上がりを含めた爽快感の表現に「さらさら」と「すべすべ」が出てくる。さきほどの「ぬめり」はどちらかといえば粘着感だが、こちらはそういうものがない爽快感である。だからといって湯持ちが消えるわけでない。たとえてみれば海水浴のべたつきでなく、森林浴の爽やかさに似ている。

しっとり

 使わないとはいえよく耳にするのが「しっとり」である。肌によく適合した状態であるとともに、その心地良さを表すのだろう。夢見ごこちの「うっとり」まではいかないが、圧迫感を伴う「ねっとり」とは異なる爽快状態だろう。

つるつる

 「さらさら」や「すべすべ」に似ているが、肌への浸透の良さを表現するとき「つるつる」を使う。「つるつる」と「すべすべ」とほとんど一致するが、湯上がり後の肌の色に差がある。でも、使い分けはけっこう難しい。わたしは女性だけにふさわしい言葉だと思っている。男のハゲに「つるつる」は厭味だろう。

ぬるぬる

 源泉によっては「べたべた」というほどではないものの、粘度の濃いものがある。風呂好きにはなじめても慣れない者には違和感を伴う粘りだ。薬湯に入ったときの肌ざわりでもある。最近の温泉にはなくなったが湯の華が浮いたり、硫黄分が多い山の温泉にあったような気がする。【ナトリウムー炭酸水素塩泉(旧泉質名「重曹泉」)を加熱している温泉施設ではアルカリ性を増して一段とぬるぬる感が増すようです。『温泉学入門』p41】

 このほかにも入浴感覚を表す表現はあるに違いない。成分や数値を並べてもピンとこないのも入浴である。熱い湯を好む人とぬるい湯を好む人では同じ湯温でも苦痛感や爽快感が異なるからだ。その違いが感覚の表現に反映するのだろう。