湯上がり美人

前頁      次頁


トップページ  風呂全項目  よりみち解説   旅行解説   お笑い解説

 浮世絵が切手になった時代がある。「ビードロを吹く娘」(喜多川歌麿)や「見返り美人」(菱川師宣)などがあった。そこで思い出すのが「湯上がり美人」という言葉だ。見慣れた妻子を湯上がりのときだけは思わず見直す。湯気の火照りが錯覚させるのだろうか。

 湯上がりの男を見てもむさくるしい。やっぱり、湯上がりの美しいのは女性である。厚化粧でおぞましい部類の女性が素肌の美しさを感じさせるときもある。といっても、どうしようもないタイプはわたしを含めて男女にいる。それでも、湯上がりの時だけは女性がすべて美人に変わるのも不思議である。

 もっとも、風呂が嫌いですぐのぼせるわたしだから、湯あたりで美しく見えるのかもしれない。ともあれ、湯気というものは色気を生むのだろう。妖艶(ようえん)と異なり、明るい生気がただよう。これは霧の効果ではなく湯気のもたらすものだ。

 これは入浴を満喫した女性のオーラなのかもしれない。仕事や生活の疲れと異なり、入浴を存分楽しんだ反映なのに違いない。長風呂に突き合わされてうんざりしていても、湯上がり美人になった妻子に文句を言う気をそがれるものだ。湯気に煙に巻かれてしまうのもふがいない。

   ○切手で巡る美術の旅:東京国立美術館 浮世絵{20世紀の切手}
     http://www001.upp.so-net.ne.jp/fukushi/philately/tokyo_nm_ukiyoe.html