2012 飛騨高山・金沢旅行記


その二 八月七日 飛騨高山〜金沢

 昨夜、コンビニで買ったパンと缶コーヒーで朝食すませ、九時に宿を出た。まずは昨日もいった高山陣屋前の広場での朝市を見学した。野菜に漬物、桃、トウモロコシ、民芸品などが白い布をかぶせたテントで売られていた。桃は一つから販売していて、頼めば皮もむいてくれる。

 しばらく、朝市を見学した後、上三之町へ向かった。高山の人たちは陣屋に遠慮したため、表通りを物置程度の低い二階にし、裏側に本屋敷の立派な二階を造った。この低い二階は俗に「ごみ二階」と呼ばれ、高山の古い家並みの代表的な建築様式として知られているそうである。まだ、朝早いが、すでに通りには多くの観光客が出ていた。

 土産物屋、泥染めや刺し子の店などを見て回った。妻は手織りの教室に通っており、手織りの店を探していたが、裂き織りの店を見つけ、中に入った。中では中年の女性が店の奥で手織り機を使い、布を織っていた。訊くと、店の商品は、全部手作りだという。どのくらい売れるのかわからないが、このような人生はいいなと思った。妻は手織りで使う美しい糸を買い、とてもうれしそうだった。

 街歩きを続け、そろそろ暑くなってきたので、一之街にある高山昭和館に入った。ここは主に昭和三十年代のものを中心に展示している博物館で、中にはいると懐かしいものがいっぱいあった。床屋、旅館、飲み屋、電気屋、おもちゃ屋、駄菓子屋、病院、学校などが当時の姿で再現されている。二階には、高山ならではの農機具なども展示されていて、昔の生活の一端を見ることができる。

 高山昭和館を出た後、宮川朝市を見学にいった。宮川沿いに白い布を屋根代わりにした屋台がずらりと並んでいた。ここも、野菜や果物、漬物などが主流であるが、それに混じって木彫りや焼き物、アクセサリーなどのお土産物を置いた店も多く、高山陣屋前にくらべるとやや観光客向きなのかもしれない。妻はここでさるぼぼのストラップを友達のお土産用に買った。さるぼぼというのは高山地方で昔から作られている人形で、縁起ものとしてお守に使われるという。

 宮川朝市を見学した後、いくつかお土産物屋をのぞいてから、十二時発猪谷行きの高山線の乗るため、駅に向かった。駅で駅弁を買い、目的の電車に乗り込んだ。乗客も少なく、足を前の席に投げ出し、電車が動き出してから、駅弁を食べた。特急を除くと、高山から富山に直行する電車はない。JR東海とJR西日本の境界が猪谷駅ということなのだろうか?

 猪谷駅は山の中にぽつんとあった。乗っていた数人の乗客はほとんどが鉄道ファンらしく、さかんに電車の写真を撮っていた。駅舎の外に出てみたが、時間を潰せるようなところはなく、周囲は圧倒的な緑に覆われた山が圧し掛かってくるようだった。結局、到着した電車の前に止まっていた富山行きの電車の車内で、発車を待った。涼しい場所がそこしかなかったのである。

 富山からは北陸本線で、目的地の金沢に向かった。この電車も空いていて、のんびりと座ることが出来、金沢には三時半過ぎに着いた。金沢には二泊する予定なので観光に便利な香林坊近くのホテルに電話をすると空室があり、宿はすぐに決まった。駅には外国人の団体さんがいたり、僕たちの前をカップルの外人さんが歩いていたりと、金沢も高山同様、外国人観光客の多いようである。

 ホテルに着いた後、しばらく休憩してから、ホテルにほど近い長町武家屋敷街を見学に行った。ホテルから長町武家屋敷街に向かう途中に鞍月用水が流れている。鞍月用水沿いには洒落た店が並び、飲食店も多くある。少しのぞいてみたが、値段が高く、貧乏旅行人には敷居が高い。この鞍月用水と大野庄用水の間に、武家屋敷街がある。

 武家屋敷街は狭い路地で、古い街並みによく見られる鍵の手になっていたりと、外敵の侵入を考えて造られている。路地の両端には土塀が続き、武家の町であったことを思わせる。外国人の観光客が三脚にカメラを据え、移動しながら写真を撮っていた。

 夏の日は長く、まだ空も明るかったので、金沢城に行ってみたが、門が閉じられていて中に入ることが出来なかった。これまで、各地の城址公園という場所に行っているが、だいたいが一日中開放されていたので、意外だった。閉じられていては、仕方ないので、夕食をとるため、街を散策した。

 旅に出て、一番苦労するのは夕食である。どうしても夜はお酒中心の店が主流で、観光客相手で値段の張るところが多い。旅行に出た開放感で観光客は、懐が緩くなっているから、店の戦略としては正解かもしれないが、貧乏旅行している者にとっては、入りづらい。値段が手頃で、うまくて、定食系の店を探すのは至難のワザで、行きつく先は駅前食堂とかになりがちである。

 妻と夜の街をほっつき歩いていると、一階が食料品関係で、二階が飲食店街になっているビルがあったので入った。二階に入っている店舗を回ってみると、幸いなことに何処もリーズナブルで、しかもお酒中心ではなく、しっかりと食べられそうなところばかりである。その中のお蕎麦屋に入り、天丼セットを注文した。

 天丼セットは天丼にそばまたはうどんが付いてくるもので、僕は冷たいそば、妻は冷たいうどんにした。どうということはない店と思ったが、店主は加賀野菜にこだわっているようで、月毎に自身で新聞を出していた。読ませてもらったが、新聞とはいっても、厳めしいものではなく、自身の近況や加賀野菜に関する記事がほとんどで、ほのぼのとしたものだった。

 肝心の天丼、そばとも美味しく、特に天丼の野菜は店主の新聞を読んだ影響かもしれないが、味が濃くて印象的だった。店を出た後、コンビニでお酒とおつまみを買って、ホテルの部屋でオリンピックを見ながら妻と飲んだ。(2012.8.22)

―つづく―


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