2007 ペルー旅行記


3.ペルー独立記念日

 ペルー独立記念日のこの日、ペルーに来て初めて車でドライブに行くことになった。ヒロミがガルシア大統領の演説を聞きたいというので、その後、市内を周ることになった。彼女は通訳をやっているため、演説の内容を訊かれる可能性があるという。それに備えてテレビで流れている大統領の演説の要所々をメモし、さらに隣に座っていた僕に通訳もしてくれた。そして午後からサチコ、ヒロミ、キョウジそしてJさんと僕の5人でドライブに出かけた。

 最初に向かったのはセントロという旧市街であり、大統領の官邸や大聖堂があるアルマス広場で車から降り、少し辺りを歩いた。今日は独立記念日ということもあり、周囲は交通規制がされていて、普段よりずっと人通りは少ないという。セントロは普段は治安があまりよくないらしい。

 しばらく歩いて、その後、また車に乗り、そこから中華街、電気街のような所を見て回った。
「こんなところに入ったら、物を買うより早く財布がなくなるわよ」とサチコは大勢の人たちでごった返している市場のような場所を指さして言った。

 車はセントロからミラフローレス地区に向かって走った。そして海岸線のショッピングモール、‘ラルコマール’に入った。海岸線の高台のあるこのショッピングモールには日本食から中華などいろいろなレストランが入っていた。そして鉛色の空には何処から飛んでくるのかパラグライダーがいくつか舞っている。よく見ると、だいたいが二人乗りでお金を出せば空の散歩が楽しめるらしい。そしていくつのも高層マンションがその背景に見える。セントロの古い街並みとは対照的で、違う国の来たような不思議な気分になった。

 ここで夕食をとる予定だったそうだけど、もうひとついい店がなさそうなので、海岸線に沿ってドライブした後、Jさんの気に入っている鳥料理のレストランに行くことになった。海岸には高級レストランが点在している。メニューの数の多さでギネスブックに載っている店もあれば、海に迫り出して建てられているものもある。砂浜からは道路を挟んで、高い崖になっていて、それは今にも崩れそうに岩と砂がむき出しになっている。「コンクリで固めるとか、護岸工事しなくて大丈夫なのかな?」とJさんに言うと「大丈夫でしょ」という答えが返ってきた。雨がほとんど降らないリマでは地盤が緩むということはないのかもしれない。

 Jさん行きつけの鳥料理のレストランには7時過ぎに着いた。カウンターの奥にある石窯には何羽もの串刺しにされた鳥が回っていて、丸焼にされようとしていた。見るからに食欲をそそる光景である。席に案内され、鳥のモモ、胸、アンティクーチョ(牛ハツの串焼き)、フライドフテト、サラダなどを注文した。

 ペルーの肉料理は、ほんとに肉という塊でやってくる。モモや胸肉を手でつかみ、頬張る。Jさん行きつけの店というだけあって味はいいが、少し味付けが濃いような気がする。後でわかったことだが、日本人からするとやや濃いめの味付けがペルーでは標準のようだ。

 家に着いたらJさんが
 「少し眠っておいた方がいいかも」と言ってきた。そういえば、今日は土曜日。これからJさんの同級生と出かける予定になっていたのだ。全く知らない人たちと、しかも言葉も通じない中、数時間いっしょに過ごすのは辛い。何とか角が立たないようにキャンセルできる方法はないものか…。

 「H、起きて!パティとハイメが向かいに来たよ」
僕は眠そうな声で
 「Quiero descansar」と言う。
 「何?なんて言ったの?」とJさんは笑いながら訊き返してくる。
 「Quiero descansar」と僕はもう一度繰り返す。
 結局、これが当たって、僕はゆっくりと休めることができた。ただ、スペイン語で「休みたい」と言っただけだった。(2007.9.23)

―つづく―


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