北海道旅行記 2004 その4


山から海へ

 7月30日、Tさんのこだわりとは正反対に朝5時くらいに目が覚めた。早く出発するしないに関係なく、やはり自然が豊かなところでキャンプしたときは早起きしないともったいないように思う。自然が一番美しいのは早朝のように僕は思うからだ。朝は透明ですべてが澄んでいる。だから、よほど天気が悪くない限り、近辺を散策する。

 この日も、キャンプ場から続く遊歩道を散策してみた。糠平湖の辺まで歩いた。びっくりしたのは川岸に動物の大腿と思われる骨があったことだ。辺りをさらに探すと、肋骨らしい細い曲がった骨と、頭蓋骨が見つかった。その形からすると、どうも鹿の骨のようだった。キャンプ場に持ちかえり、Tさんのテントの前にでも置いておこうかと思ったが、気味が悪いので止めた。

 テントに戻り、コーヒーを一杯入れて飲んでから、テントの撤収を始めた。8時、荷物をバイクにつけ終えた。Tさんは公言通り、まだ寝ている。挨拶をしてから行きたいが、寝ているのを起すのも気が引けると思い、バイクのエンジンをかけたら、Tさんが起き出してきた。
「もう、バイクに荷物つけたんですか?」と素っ頓狂な声で訊いてきた。もうといっても8時を回っていて、そんなに早い時間ではない。Tさんのカメラで記念撮影してから出発した。

 僕は今回、カメラは持って来ていなかった。カメラを持ってくると写真を撮ることが義務のようになってしまい、何かいやだったからだ。それに北海道の広大な景色を写真で切り取っても仕方ない。自分の目で納得行くまで、自然を見つめればいい。

 国道273号を北上する。この道は糠平国道とも呼ばれ、道内最高所の峠の三国峠を通る。森林の深さを感じる素晴らしい道で、北海道らしさを感じることのできるハイライトのひとつだろう。

 層雲峡を過ぎ、大雪国道39号から名寄国道40号で北上する。士別でコンビニに入り、おにぎり2個を買い、店先で食べた。これが今日の朝食というわけだ。国道40号は走って面白味のある道ではない。その道を北上しているわけは、道北スーパー林道とも呼ばれる美深歌別大規模林道を走るためだ。この辺りは林道の宝庫であり、組み合わせて走ると80kmくらいにはなるだろうか。

 美深駅を過ぎてしばらく走ると、ライダーコースという看板が出たので、そちらに向かう。やがて舗装路はジャリ道になる。整備されていて走り易いが、雰囲気がそんなにいいとは感じなかった。ただ、道が登るにつれ、素晴らしい景色となった。加須美峠からの眺めは眼下に熊笹の草原が広がる爽快なものだった。ここから函岳レーダー道路が分岐されていて、終点まで行くと大パノラマが広がるようだけど、体にかなりの疲れがあるようなので無理をせず、それは次の機会にとっておく事した。

 加須美峠からの下りはちょっと怖かった。下りの浮きジャリは厄介だ。特に荷物満載で転倒したくはないので、慎重に下った。峠からの急な下りを過ぎると、フラットな走り易いダートになって安心したのだけど、しばらく走るとまた浮きジャリの下りが待っていた。慎重に下ったつもりだったが、途中でバランスが崩れ、立て直そうとしたとき、自分の意思とは反対にアクセルを回してしまった。バイクは急加速して左側に転倒、僕はジャリに強か膝を打ちつけた。

 バイクを起そうとしたのだけど、足場が悪くだめで、荷物をすべて取って引き起こした。幸いバイクは無事で、人間の方もたぶん膝はすりむいているだろうが大丈夫だった。それにしても、何とも情けない。しかし、このあとさらに情けないことが起きた。

 バイクを引き起こし荷物をつけた後、再発進しようと思い、アクセルを回すと場所が悪かったせいか、前輪が滑り、今度は右側に立ちごけしてしまったのだ。自分に対して腹が立ち、今度は比較的足場もよかったため、荷物をつけたまま、バイクを引き起こした。バイクを立て続けに2回引き起こしたので、体力的にかなり消耗してしまった。

 何とか下り終えると、また走りやすい道になり、それがやがて舗装路に変わり、それがまたダートに変わり、そしてまた舗装路に変わって道道120号に出た。そして乙忠部でオホーツク海に出た。初日以来、久しぶりの海だ。山から海へ、これからしばらく海沿いのツーリングになる。

 国道238号で今度は南下する。幌内辺りのコンビニで遅い昼食のおにぎりとアロエヨーグルトを買ってとった。道路の反対側では子供が興味深そうにこちらを見ていた。そのうち道路を渡ってきたのだけど、はずかしがり屋なのだろう、こちらを気にしているのはわかるのだけど、話しかけてはこない。食事をとり終え、バイクで出発するとき、軽く笑ったら、笑顔で返してくれた。

 まだ時間はそれほど遅くないけど、体がぐったりと疲れていた。久しぶりのツーリングなのと、ダートで2回転んだせいだろう。あまり走りたくなかったので、雄武町の日の出岬でキャンプすることにした。ここは数回来たことがあるのだけど、そんなにいい印象はなかったが、実際にテントを張ってみるとなかなかいいところだった。キャンプ代も400円とまあまあ安く、芝生のサイトのためふかふかだし、何より目の前にオホーツクの海が広がっている。それにホテル日の出岬でオホーツク温泉に入ることもできる。

 テントを設営した後、早速温泉に入りに行った。立派なホテルなので、入浴料金も高いのかなと思ったが、400円と標準的だった。この温泉は露天風呂も付いている立派なもので、当日は高校生の団体が入ったりしていたが、それが出てしまうとのんびりできて、いつまでいたくなった。露天風呂から、オホーツクの海が一望できるのもよかった。雄武町はかなり観光に力を入れているようで、その意気込みがいろいろなところに感じられた。結局、温泉には1時間半くらいいて、テントに戻ったときは6時を回っていた。

 さて、夕食の準備だ。今日は先程のコンビニで買ったレトルトのカレーがメインだから、何としても飯炊きは失敗できない。米をとぎ、つけ置き30分を実行する。その間にカレーに入れる野菜類の下ごしらえをした。じゃがいも1個とタマネギ1個を適当な大きさに切り、大きい方のコッフェルで柔らかくなるまで煮る。

 そしていよいよ、ご飯を炊く。前回の失敗を反省して、今度は今までやってきた自分の方法でやることにした。ただし、それだと食べられないほどの失敗もないが、おいしさに欠けることが多いので、多少変えることにした。まず、時間はかかるが、できるだけ弱火で炊く。今まで成功した場合を考えると、吹きこぼれるまで時間をかけているのに気づいたからだ。そして、吹きこぼれてからは、強火にするのだけど、その強さを若干落すことにした。最後に、コッフェルがある程度冷えるまで、じっくりと蒸らした。

 こうして時間をかけて炊いたご飯は大成功だった。久しぶりにキャンプでおいしい飯が食えるとうれしくなった。しかし、また失敗をしてしまったのだ。炊けたご飯の上に、先程水で煮たじゃがいもとタマネギを乗せ、温めたレトルトのカレーをかけて食したのだけど、味が薄くなってしまいおいしくなかった。原因は水で煮た野菜だった。水で煮たため、カレーの味がしみ込まず、さらに量が多かったため、水っぽいカレーになってしまった。健康にはいいやとガマンして食べたが、ご飯がうまく炊けたのは大きな収穫だった。つづく…


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