北海道旅行記 2002 その7


8月8日 日本海オロロンライン

 朝起きても雨はかなり激しく降っていた。これだけ雨が強いとテントの撤収もできない。これは気長に雨が止むのを待つしかない。ここまで天気には悩まされてきたが、日中は比較的強く降ったことはなかったので、順調には来ている。そんなに慌てることもないだろう。もし、このまま強い雨が降り続くようだったら連泊してもいいかなと思った。温泉は近くにあるし、建物の中には食堂もあるし、休憩室もある。昼を食べに行ってあとはずっと天塩温泉で過ごしてもいいかもしれない。テントの中で昨日コンビニで買ったカレーパンを食べ、缶コーヒーを飲みながら雨が降り続く空を見上げてそんなことを思っていた。

 空に願いが通じたのか9時過ぎになって雨が止んだ。回りのテントがいっせいに撤収を開始する。ぼくはそんなに急いでないのでのんびりと撤収をして出発したのはもう10時30分近かった。今日は特に何処に寄るという計画も何処まで行こうという計画もなかった。とりあえず初山別のキャンプ場を見ておこうと思った。もし、雰囲気がよかったら今日はそこでテントを張ってもいいかなと思った。

 初山別のキャンプ場に着いたのは11時ちょっと過ぎだった。出発の時はかすかに弱い雨が降っていたが今はほとんど止んでいた。キャンプ場はしょさんべつ天文台の裏側の静かな奥まった場所にあった。駐車場にはオンロードバイクが1台止まっていて、キャンプ場には黄色いテント1張あった。恐らくこのバイクのライダーのテントだろう。キャンプ場からちょっと歩いたところには岬センターがあり、温泉にも入れるようだ。普段は無料らしいが夏季だけ500円を徴収するようだ。雰囲気もいいし、ここでもいいかなと思い辺りを散策した。

 キャンプ場の辺りは金毘羅岬というようで階段を降りると海岸に出た。ここは海水浴もできるようでキャンプができる設備もあったが、この天気のためほとんど人影はなかった。天気さえよければ静かだし、海水浴もできるこのキャンプ場は最高かもしれなかった。

 だけど、時間はまだ11時30分。ここにテントを張ってしまったら長い時間、何をして過ごせばいいのだろうか?天気がよければ海を見ながらぼーっとしていてもいいかもしれないが、この天気ではそうもいかない。雨が降り出したらテントにこもっているしかないだろう。一時はここでのキャンプも考えたがやっぱり出発しようと思った。

 時計を見るとお昼近かったのでキャンプ場の前にあるレストランに入った。客はぼく独りしかいなかったが、海鮮丼を注文するとすぐ女性が入ってきてぼくの後ろの席に座りぼくと同じ海鮮丼を注文した。その女性がウェートレスと話している声が聞こえてきた。その話だと独りでバイクで旅をしていて、昨日もこのレストランに入ったということだった。駐車場に止まっていたバイクは彼女のでキャンプ場に張ってあった黄色いテントも彼女のだった。

 ウェートレスは女性独りで旅をしていることにかなり驚いたようで話ははずんでいった。その内容から彼女はバイクで北海道を周っているがこの雨と寒さのため精神的、肉体的にかなり疲れているようだった。ウニ、イクラ、シャケ、イカ、マグロなどが豪華に乗った海鮮丼を食べ終わった後、その女性を見たらすでに海鮮丼を食べ終わり窓の外をぼーっと見ていた。彼女はいつまでその椅子に座っているような気がした。事態が好転するのを待って…。

 天気はほんとうによくならない。初山別ではほとんど止んでいたが、走り出すとまた小雨が落ちてきた。横に見える海も鉛色だ。寒々とした光景が目の前に展開される。羽幌、留萌と過ぎ雄冬岬が近づくと景色は荒々しさを増してくる。雄冬岬のパーキングで休憩して何処まで行くか考えてみた。時計を見ると時刻は3時を回っている。思い切って積丹まで行ってしまおうかと思ったが、たぶん時刻は7時を回ってしまうだろう。積丹半島は明日ゆっくりと回ることにしてできるだけ近づいておこうと思った。

 石狩のキャンプ場に着いたのはもう5時過ぎだった。ここは前に1回キャンプをしたことがある。その時は駐車場のおじさんに近くのあるライダーハウスに泊まるように言われたが結局ぼくはテントで独りゆっくりと寝ることを選んだ。駐車料金はバイクで200円だったがおじさんがまけてくれた。今日は雨ということで駐車場には係りの人は誰もいなかった。駐車場は雨のためぬかるんでいてバイクを止める場所が難しい。できるだけキャンプ場に近い場所に止めた。

 テントを設営しているとオンロードに乗ったライダーがやって来た。オンロードだけにバイクを止める場所にはかなり神経質になっている。彼は世田谷に住んでいるようで品川ナンバーのバイクを久しぶりに見たと喜んでいた。ぼくはテントの設営が終わったので近くにある温泉施設、番屋の湯に夕食をとりにいった。

 食堂はあまり人がいなかった。雨のため海水浴客が少なく、そのためお客さんが少ないようだ。ぼくはシャケの塩焼き定食を頼んだ。やっぱり北海道のシャケはおいしい。ご飯の量がちょっと物足りなかったが、おいしい魚を食べられたのでよかった。係りの人に番屋の湯は何時までやっているか訊いたら10時までやっているとのことだったので温泉は後回しにして周囲を散策することにした。

 まずははまなす公園に向かった。ここは特に何があるというわけではないがちょっとした原生花園になっている。ただ、訪れる人はほとんどなく特に夕暮れの時間帯なのでぼく独りしかいなかった。はまなす公園を出た後、新しく出来た歴史の道というのを歩いてみた。きれいに整備された道が続くが見るべきものはほとんどない。新しくできた公園で一休みした。いったい誰がこの公園を利用するのだろうと疑問がわく。何でも芝生をひいてきれいに整備すればいいというものでもないと思う。番屋の近くにあるビヤホールもまだ7時前なのに人が全く入っていなかった。

 あとは番屋の湯でゆっくり温まろうと思った。ここも天気が悪いせいか以外と空いていてゆっくりと入浴できた。ここもサウナと露天風呂がある。これが今のトレンドなのだろうか?最後に露天風呂に入ったがもう陽は完全に沈んでしまったため、辺りは真っ暗で何も見えなかった。温泉から出た後はMさんの電話をした。番屋の湯にいると言ったら驚いていた。Mさんは札幌に住んでいるため、あまりぼくが近くにいることに驚いたのだろう。その後、休憩室で寝っころがりながらTVで野球を見た。テントに戻るより、ここで時間までゆっくりとしている方がよさそうだ。結局9時過ぎまでこの休憩室でごろごろしていた。

 テントに戻ってからは明日のルートを考えた。ここまでくれば積丹半島はもうすぐだからじっくりと回れそうだが、問題は天気だ。それだけが心配だった。つづく…


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