昨年の暮れ、平塚の義姉の家でクリスマスパーティーをした。集まった人たちは義姉の次男タカシ、義姉の父方の従妹メグとその次男Y君、母方の従妹ナッコと一人娘Kちゃん、そして僕とJさんの8人だった。それぞれが料理を持ち寄り、楽しいひと時だったが妻はKちゃんのクリスマスプレゼントを家に忘れてきてしまった。 いつでも都合のいいときに寄ってとナッコに言ったのだが、伸び伸びになってしまっていた。それほど大したものでもないプレゼントをわざわざ取りに来てもらうのも気が引けるし…と考えてKちゃんが4月から高校生になるので入学祝をかねてプレゼントを渡すことにした。それだったら、ただ単にプレゼントを取りに来るより相手側も気が楽だろうと考えたのである。ナッコたちは車で来るのだが、家には駐車スペースがないので前の家に駐車させてくれるようにお願いしたら、気持ちよくOKしてくれた。 2月下旬、大寒波の真っ最中、ピンポーンと呼び鈴が鳴ったのでドアを開けると胸に英語のロゴの入ったアイボリーのトレーナに黒いプリーツスカートをはいたKちゃんが立っていた。「よく来たね」というと「こんにちは」と元気よく挨拶してくれた。ナッコも車から降りてきて、「車は何処に止めたらいい?」と訊かれたので、「前の家なんだけど、声かけるね」といい、呼び鈴を鳴らすとご主人がすぐに出てきてくれて、こちらが要件をいう前に「どうぞ、どうぞ」と言ってくれた。 Kちゃんとは年末に会っているが、大人っぽくなったような気がした。髪の毛が伸びたから印象が変わったのかもしれない。「何飲む?コーラ、お茶、温かい紅茶もあるよ」と訊くと「コーラ」と予想通りの答えが返ってきた。クリスマスパーティのときもコーラばかり飲んでいたのである。 Kちゃんと初めて会ったのは彼女がまだ3,4歳の時だったと思う。まだ新婚だったナッコがお披露目で平塚の義姉の家に夫を連れてきた。ナッコの夫は背の低い人だったが、体ががっしりとしていて、とても快活な人という印象を受けた。カズエは「すぐにでもスペイン語を話し出しそう」と評価していた。その後、Kちゃんが誕生して、僕たちはお祝いをしたのだったが、数年後、2人は離婚した。 離婚後、ナッコとKちゃんはナッコの実家のある沖縄で暮らしていたが、Kちゃんが中学校に入学するタイミングでこちらに戻ってきた。そしてここ数年、クリスマスには平塚の義姉の家に集まるのが恒例になっていた。 ナッコは現在、働いていない。体調を崩して、それがまだ回復途上でそろそろ仕事を探そうかなという感じである。ただ、お兄さんが会社の社長をしていたりして多少の援助があったようでお金には不自由はしなかったようだが、Kちゃんが自身の希望から私立高校へ進学することになり、そろそろ心細くなってきたようだ。 Kちゃんが公立から私立に変えたのは自分の希望に叶う選択があったからだ。それは彼女が中学生時代に始めた部活動が切っ掛けだった。友達に誘われたから、入っただけだったというが、続けていくうちに興味が出てきたという。志望した私立高校にはそれをさらに追及できるポジションがあるそうだ。ただ、ナッコはそれに対しては一般的ではなく、その経験が将来に繋がるのか、端的にいってしまえば就職に役立つのかということ杞憂している。 確かに高校の部活だったら、Kちゃんの希望は叶う可能性はあるが、それを仕事に結びつけるのは、かなり難しいように思われる。だからといって諦めてみんなと同じレールに乗ってと考えるのも親の気持ちとしてはわかるが、やるだけやった後ではないと後悔するのではないだろうか。 ナッコたちは現在、賃貸のアパートで暮らしているが、いずれは家を買いたいと思っている。実際に不動産屋に行ったそうだが、「働き始めてから来てください」といわれてしまったという。お金はまだあるそうだが、家を即金で買えるだけの資金はないという。Kちゃんが仕事に就いたら住宅ローンをリレーすることを考えているそうだ。親子リレーローンというのはできるようだが、Kちゃんに制約を与えてしまうようでどうなかのかな?と僕は思う。 この日、妻はペルー料理のギソ・デ・ポヨ(鶏肉、ジャガイモ、ニンジンの煮込み料理)、僕はシメジの炊き込みご飯をつくった。ギソ・デ。ポヨに炊き込みご飯は合わないのではないかと思ったのだが、ギソ・デ・ポヨの味付けがやや薄かったのでよかったかもしれない。 「何か苦手なものある?」とKちゃんに訊くと「ない」とはっきりと答えた。「好き嫌いはないの。お母さんはあるけど」と付け加えてニコっと笑った。食事時だからお茶の方がいいかなと思って「飲み物は?」と訊くと、すかさず「コーラ」と答えた。Kちゃんは食欲も強いようでサラダを何回かお代わりした。確かに好き嫌いはないようだった。 食後、妻の作ったプリンを出し、「コーヒー飲む?」と訊くと「飲む」と答えた。これはちょっとうれしかった。最近は健康を気にしてカフェインの入っている飲物を敬遠する人もいて、気を使うことが増えてきた。コーラにしてもゼロカロリーとかダイエットコークじゃないとダメという人もいるし、そもそもコーラを飲まない人もいる。そこにいくとKちゃんはコーラをがぶがぶ飲むし、コーヒーも好きなようで、気を使わなく済む。 「砂糖入れる?」って訊くと「うん」と言ったので砂糖の入っている容器を渡すと、スプーンで2杯ほど入れた。「ミルクは?」と今度は妻が訊くと「うん」とうなずいたので「じゃー入れるから、よかったら声かけて」といってKちゃんのコーヒーカップにミルクを注ぎ出した。ところがなかなかKちゃんは声をかけない。「もっと?」と妻が声をかけると笑いながらうなずいた。妻はミルクを注ぎ続け「まだ?」と声をかけるとまたKちゃんはうなずいた。結局、コーヒーはカフェ・オ・レになった。(2025.3.15) |