定年退職

 今年で六十五歳になるパートさんが会社の方針として、契約を終了すると言われた。通告を受けたパートさんはいきなりだったのでショックを受けたようだった。というのも、現在、僕の働いている会社は社員の定年は六十歳だが、パートは決まりがなく七十歳を過ぎても働いている人もいて、最高齢は七十三歳である。

 現在、六十五歳以上で働いているパートさんは六人でこの人たちも軒並み解雇される。このパートさんは七十過ぎまで働いている人たちをみて、自分もそのくらいまでは働き続けることが出来ると考えていただけにショックだったようだ。世の中の傾向として定年は伸びており、また定年を定めない会社などもある。それからすると、世の中の流れとは逆行した措置である。

 何故、今まで決まりのなかったパートの定年に年齢制限を設けたのだろうか?それは会社の業績の悪化が最大の要因だと思われる。繁忙期の十一月から十二月、今年もそれなりに忙しかったが、例年と比べると楽ではあった。人が約二人少ない状態でそうなのだから、通常の状態だったが暇という感覚になっていたかもしれない。そのため、働きの悪いと思われる高齢のパートを退職させ、若い人の給与や人員の確保を強化しようとしているようである。

 そもそもこのパートさんは何歳まで働きたかったのだろうか?六十五歳の定年というのは常識的なものである。日本人は何歳まで働きたいと思っているのだろうか?公益財団法人生命保険文化センターの統計によると65歳までが25.6%、70歳までが21.7%、75歳までが11.9%、働けるうちはいつまでもという人も20.6%あった。

 多くの人が60歳を超えても働き続けたいと思っているようだが、その事情は個人によってかなり違うように思う。働くことが好きで働きたいと思っている人もいれば、社会との繋がりを持っていたいと考えている人、働きたくはないけど働かないと生活が苦しいからという人もいるだろう。僕はできれば今すぐにでも仕事を辞めたいが、働かないと生活がままならないから、或る程度の年齢までは働かなくてはならないと考えている。

 何歳まで働くかということを考えるとき、どのくらい年金がもらえるのかということが重要になる。年金の受給年齢を繰り下げることにより、受給額はアップする。一年繰り下げると8.14%アップする。僕の場合、70歳まで繰り下げたとすると、現在の年収とほとんど同額の金額になる。したがって70歳まで受給年齢を伸ばせば、何とか年金だけで生活できることになる。

 現在勤めている会社が定年制になったことで、最長で65歳(それより前にクビになる可能性もあるが…)までしか勤務できなくなり、65〜70歳までの5年間をどう乗り切るのかという問題が出てきた。そこでいろいろと無い頭を巡らせて考えた。

 一つは65歳で退職と同時に年金を受給することである。幸いにして現在住んでいる家の住宅ローンは65歳で終了するため。支出はある程度減る。しかし、年金だけで暮らしていけるかとなるとかなり苦しく、ある程度貯金を崩しながら…ということになるように思う。しかも、住宅ローンはなくなっても、持ち家の場合、メンテナンス料というものは必要になり、うちも近いうちに外壁や屋根の塗装をしなくてはならなくなる。

 そうなると年金を受給しながら、週何回かは働きに出るというのが現実的に思われるが、長い目で見ると最善の方法ではないような気がする。人間誰でもいつかは働けなくなる時期が来る。つまり最終的には年金だけで生活することになる。もちろん、投資などをしていれば状況も違ってくるだろうが、そのときやはり支給額の多い方がいいに決まっている。年金の受給年齢は繰り下げにできればできるほど後々楽になるのは確かである。

 しかし、ここでもうひとつ考えなくてはならないことがある。生活することだけに汲々として、人生の楽しみを後回しにしていいのだろうかということである。折角定年になったのだから、仕事などせずに自分の時間を楽しんだ方がいいのではないか。ある程度元気なうちに、長く自由な時間を自分の好きなように使いたい。70歳まで働いたとして、果たして元気でいろいろとやりたいという気力が残っているのかというのはわからない。定年後まで生活に追われるというのは侘しい。

 話は堂々巡りになってしまうが、今考えているのは、とりあえず定年になったらフルタイムに近い仕事を探して、できれば2年ないしは3年働いて、67、68歳から年金を受給しようと思っている。もし、現在と変わらない給与を得られれば、住宅ローンのなくなった分は貯金でき、2、3年働ければ外壁の塗装資金は捻出できるのではないかと見積もっている。65歳で仕事が見つかるか、どうかはわからないけど。(2025.2.11)




皆さんのご意見・ご感想をお待ちしています。joshua@xvb.biglobe.ne.jp

TOP INDEX BACK