そろそろ変えませんか?

 ついに東京に四回目の緊急事態宣言が発出された。コロナ禍になって一年半が経つが未だにこの病気をどのくらい恐れなければいけないのか?というコンセンサスが得られていない。現在(7月11日)、東京都の重傷者数は61人で東京都の重傷者用の病床は392床なので病床使用率は16%でしかない。それにもかかわらず、緊急事態宣言を発出したのは新規陽性者が増えているからだが、高齢者へのワクチン接種が進んでいく中、果たして妥当な判断だったのか大変な疑問である。

 さらに西村経済再生大臣から常軌を逸した発言があった。緊急事態宣言で酒類提供停止に応じない飲食店には金融機関から遵守を働きかけてもらうというもので、初めて聞いたとき本気でいっているのかと疑ったくらいである。さすがにこの発言に対して方々から非難の声が上がり、一日で撤回になったけれど、このようなものが出てくる背景を思うと恐ろしくなった。

 この案件は西村経済再生大臣が一人で考え、発言したものではないだろう。加藤官房長官によると内閣官房の新型コロナウイルス感染症対策推進室で作られたものらしい。この案の通達はすでに金融機関と酒の販売業者に流されていた。つまり多くの人間が関わっているにもかかわらず、この常軌を逸した案件に誰もストップをかけなかったのである。

 飲食店はいくらいじめてもかまわないと思っているのだろうか。コロナ禍で経済的に一番被害を受けているのは飲食店で、政府はそのことをどのくらいの実感をもってわかっているのだろうかと疑問に思う。恐らく全く実情を把握していないのだろう。飲食店ではマスクを外すから飛沫が飛び、それで感染が増えるから制限をかけてしまえという安易な発想に陥っているとしか思えない。しかし、飲食店で感染拡大しているというエビデンスはない。

 金融機関からの圧力、酒類販売業者への酒の販売停止要請はともに撤回された。当たり前といえば当たり前だが、さらに今度はネットのグルメサイトを通じたアンケートという形で要請を守らない飲食店の密告を市民にさせようとする案が出てきた。ナチス政権か!と思わせるような陰湿さである。

 ただし、この案はうまくはいかないと思う。そもそも、僕は感染対策を完璧にしている飲食店にはあまり行きたくないと思っているくらいなのである。先週、妻と所謂マスク会食推奨店という店に行った。マスク会食推奨店だと知って行ったわけではなく、いったらそういう貼り紙がしてあったのである。入店時にアルコールの指手消毒、席に着くとアクリル板がテーブルを二つに分断していた。マスクもしているものだから、かなり大きな声を出さないと会話は成立しない。妻は店員さんにいって夫婦だからアクリル板を取り除いてもらおうかといったが、それも厄介なことになりそうなので止めた。途中から会話を諦め、ただ出された料理を食べるだけになった。まるで自分がブタか鶏になったような気がした。こんな思いをしてまで外食をしたくないと思った。すべての人が、アクリル板が設置され、マスクを外して会話していたら注意するような店で食事をしたいと思っているかは疑問である。

 実は神奈川県ではすでにマスク飲食実施店認証制度というものを実施している。これは一般市民が覆面調査員となり、飲食店でマスク会食を奨励しているか調べるものである。これも市民をスパイに仕立て上げるわけだから、陰湿極まりないものである。何故、こんな暗い手段ばかり出てくるのだろうか?そもそも、マスク会食でコロナ感染は防げるのかという問題もある。単なる一知事の思いつきで始めたことで、エビデンスなど全くないのである。

 テレビを見ていたら、数人のオリンピック関係者が選手村近くの公園で缶ビールを飲んでいる映像が流されていた。そして、マスクをしないでビールを飲んでいますとナレーションが入った。マスクをしていたらビールは飲めないだろうというツッコミはさておき、これは隠し撮りだった。近所の人からの情報提供か、外飲みをする人間が現れるだろうと予想して張り込んでいたかだが、これもまた暗い監視社会を思わせた。テレビの隠し撮りはずっと以前からあった。始めは公園や海岸で自粛せずに外出している人をターゲットにし、さらには営業を続けるパチンコ店、そして飲食店、最近では外飲みをする若者など次々と攻撃のターゲットを示した。自分たちこそが正義といわんばかりの傲慢さである。

 よくよく考えてみると思考停止しているのは僕たちだけでなく、政治家やメディアも同じなのかもしれない。彼らの言っていることは一年前と何も変わらない。ただ、尾身会長が「人々の行動制限だけに頼る時代は終わりつつある」という認識を示した。イギリスのボリス・ジョンソン首相は19日にイングランドの新型コロナによる法的規制をほぼ全て撤廃すると発表した。(2021.7.18)




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