妻の骨折 その3

 月曜日、タクシーで九時少し前に病院へいった。借りた松葉づえで受付に行くと、すぐに松葉づえでは大変ということで車椅子を用意してくれた。受付を済ませ、診察表を整形外科の窓口に出すとそれほど待たされずに名前が呼ばれた。診察室前のベンチには多くの人が座って順番を待っていて座る場所を探すのも苦労するくらいだったが、昨日の当直の先生が予約を入れておいてくれたためのようだった。

 診察室に入ると昨日撮影したレントゲン写真を見せられ、骨折の状態を説明された。左足の腓骨が折れていて、足首がかなり外側に動いていた。病名は左腓骨遠位端骨折、左三角靭帯損傷というものだった。足首のずれから三角靭帯も断裂しているという。腓骨の折れた部分にプレートを入れボルトで固定し、切れた靭帯を縫い合わる手術を行うという。ただ、腫れが酷く、このままでは手術できないので、まずは患部を外側から固定する手術を行い、腫れが引いた後にプレート固定等の手術を行うことになった。

 「どうして昨日、入院しなかったんですか?」と言われた。「強く勧められなかったので」というと、「家にいるのはリスクあるので、すぐに入院してほしい。明日は祭日なので明後日に足首を固定する手術を行いたい」といわれ、同意した。診察の終わった後、再びベンチで待つように言われ、そうしていると処置室の方へ呼ばれた。そこで入院に必要な書類と手術の同意書などを手渡され、後で提出するように言われた。妻は入院ための検査を受けることになった。

 採血、採尿、肺のレントゲン撮影、心電図など妻の車椅子を押しながら病院内をくるくる回った。新型コロナウィルス対策のため、始めは五階の個室に入り、PCR検査で陰性になったら三階の大部屋に移るという。全ての検査が終わり、妻は五階の個室に入り、僕はナースステーション前の机で必要な書類に記入した。 コロナウィルス対策のため、家族といっても病室に入ることどころか面会も禁止になっていた。僕は廊下から、妻に手を振り、一階に降りた。そこで入院の手続きを行い、家に帰った。急な入院になってしまったため、とりあえず必要なものをまとめて午後、再び病院に持って行った。

 着替えなどの受け渡しもナースステーションを通じて行う。行った時、ちょうど妻はPCR検査を受けるところだった。看護婦さんが機転を利かせてくれて、部屋の外から妻の顔を見ることができた。部屋のドアに閉められると何ともいえない寂しく辛い気持ちになった。何となく、バスに乗る気がせず、家まで歩いて帰った。途中にあるスーパーで昼食のお弁当と夕食の食材を買った。

 妻のPCR検査の結果は陰性だった。しかし、その夜、妻は発熱をした。骨折による炎症のせいかもしれないし、大きな状況の変化に頭が混乱した知恵熱的なものかもしれなかったが、ここで病院は再びPCR検査を行った。再び陰性、その後さらに二回PCR検査をした。病院がコロナをいかに恐れているかわかった。結局、四回ともすべて陰性となり、妻は大部屋へ移された。(2021.2.7)




皆さんのご意見・ご感想をお待ちしています。joshua@xvb.biglobe.ne.jp

TOP INDEX BACK NEXT