夜の徘徊者

 最近、妻はよくリビングのソファーで寝てしまう。僕は寝室で寝ているので気づかないが、酷い時になると朝の5時くらいに目の覚めることもあるらしい。ある日の朝、妻が大きなクモが出たといった。

 その夜も妻はソファーで寝てしまい、起きたら2時くらいだったそうで歯を磨いているとカーテンレールの上に大きなクモがいたという。クモはカーテンレール伝いに歩いていたそうで、あまりの大きさにびっくりした妻は外に追いだそうと窓を開け、カーテンを揺らしたが、怖くて何処に行ったかまでは見届けなかったといった。

 その日の夜、食事当番だった僕は会社から帰ると夕食の準備を始めた。肉野菜炒めとギョーザと味噌汁を作った。妻は遅くなるということだったので、先に食事を済ませてソファーでテレビを観ていたら、キッチンの近くの壁のところに大きなクモが張り付いていた。

 それはかなりのインパクトだった。クモは壁からカーテンを伝わって床に降りてくる気配を示した。僕も何とか外に追い出そうと、キッチン横のサッシを開け、カーテンを揺らして床に降りたクモを刺激した。すると、クモはびっくりしたようで外ではなくソファーのある方へと逃げていった。

 今度はソファーに近くの窓を開け、何とかクモを外へ誘導しようとしたが、反対にリビングの奥の方へ行ってしまった。見かけとは裏腹にかなり臆病なようである。しかし、ソファーに座って寛いでいるときに足の上でも通られたら気持ち悪いのでさらに追うとクローゼットの扉の隙間から中に入ってしまった。

 何というクモだろうとネットで調べるとアシダカクモだということがわかった。見た目にはかなりのインパクトがあるが、毒はなく性格も臆病らしい。ゴキブリを捕食してくれるので、アシダカグモが二匹いれば半年で家の中にいるゴキブリは全滅するという。捕食するゴキブリがいなくなると、他の家に移っていく習性から軍曹と呼ばれているそうだ。

 人間にとってはかなりの益虫だが、見た目から怖がる人も多いようだ。そういえば、子供の頃にも、今から思うとアシダカグモと遭遇したことがあった。台所にゴキブリホイホイを設置しようとして、ぬか漬けの入れ物を取り出したら、大きなクモが出てきた。あまりの大きさにびっくりして、こんなモノがずっと家に棲んでいたのかと思うと不思議だった。家の主というような気がしたのである。

 今住んでいる家はいろいろな種類のクモがいる。黒くてぴょんぴょんと飛び跳ねるように移動するハエトリグモや洗面台や食器棚と壁の隙間に巣を作っているユウレイグモなどだ。徘徊型のクモはほとんど困ったことはないが、巣を張るクモはずっと同じところにいるため、フンなどで床が汚れてきたりするのでどうしようかと悩む。汚れるとはいっても、それほどひどくはないので定期的に掃除をするはすむのだけど、面倒ではある。

 クモの多く出る家というのは、害虫が多い家ということになるらしい。ハエやゴキブリなど餌になる虫がいるから必然的にクモも多くなるというわけだ。うちは、ハエはほとんど見ないが、コバエが多く発生したりするし、ゴキブリもたまに見かける。ゴキブリに関しては引っ越した年はほとんど見ることはなかったが、翌年は頻繁にでるようになったので、据え置き型の駆除剤を置いたら、翌年はほとんど見かけなくなった。しかし、安心して何も対策をしないとまた姿を見かけるといったことの繰り返しである。

 とりあえず、今年はアシダカクモもいることだし、彼に任せてみようと思っている。(2020.9.26)




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