町内会 Part 2

 1月中旬、家のチャイムが鳴ったので出ると、見慣れない50代くらいの男性が立っていた。用件を訊くと来年度の町内会の組長をやってほしいという。組長の翌年は役員(後から知ったのだが組長代理のようなもの)をやることになるので、2年連続になってしまうが、持ち回りでやっているのでお願いしたいといわれた。

 本心ではそんな面倒臭いことは真っ平だが、町内会に入っている以上、引き受けなくてはならず、それでは引き受けさせていただきますということになった。以前に暮らしていたところでも、町内会の班長をやったことがあるので、それほど大変ではないと思っていたが、大きな違いは世帯数だった。

 以前のところはうちも含めて8世帯だったのに対して、今回は29世帯だから3.5倍以上である。町内会の仕事で一番大変なのは町内会費の集金だと思う。29世帯、うちを除くから28世帯から集金することを思うと、気が滅入ってくる。前のときは仕事の終わった後、家に帰ってから回って、一日で終えることができたが、今度はそううまくはいかないかもしれない。他の仕事は月一回の定例会への出席、年一回の近所の公園の清掃、夏祭りの手伝いなどだそうである。

 新型コロナウィルスにより、週末の外出自粛の求められているなか、町内会の定例会が行われた。隣の町内会は中止になったので、うちの方も中止かと思っていたら、そうではなかった。指定された時間に、定例会の行われるコミュニティセンターにいくと、すでに大勢の人たちが集まっていた。コミュニティセンターといっても、普通の民家と変わりない。

 全部で30人近くはいたのではないだろうか?窓は開け放たれ、3密を避けようとする気持ちはわかるが、やはり中止にした方がよかった。前に並んでいる世話役の人は「回覧物を配るくらいで、できるだけ早く終わらせます」といっていたが、実際はなんだかんだで時間が過ぎていき、ついにしびれを切らせた人から「いつまでやっているんですか?早く止めましょうよ」という声まで飛んだ。

 それにしても、中の雰囲気は独特なものがあった。以前に町内会の班長をしたところでも、月一回くらいの集まりがあったが、基本的には配布物を渡し、それをもらって帰るだけだった。今回、初めて定例会というものに出席したが玄関で「こんばんは」と声をかけても、誰も返事をする人もなく、室内は寒々とした雰囲気で、まあほとんどの人が初対面ということになるのだから、仕方ないのかもしれないが居心地はよくなかった。もう少し、フレンドリーな雰囲気かと思っていたが、意外だった。

 配布物はパイプ椅子の上に置かれ、自分で自分の所属する組のものを探さないといけなかった。ひとりのおばさんが自分の組の物がないと探しまわっていたが、誰も声をかけず、また、おばさんも誰にも助けを求めようとせず、無関心が室内を覆っていた。

 以前、町内会は、8世帯でもクセ者が揃っていた。今度は29世帯である。全部の世帯が気さくなどということはありえず、まずは異常にうるさい人や変わり者のいないことを願うだけだ。

 回覧板に4月11、12日に町内会費の集金に伺うことをかいて回したら、緊急事態宣言が出てしまった。どうしようかと考えた。お金を受け取るだけなら、それほどのリスクはないと思うが、中には気にする人もいるだろうし、徴収は緊急事態宣言が解除されてからの方がいいのではないかと思った。

 さらに腰痛が加わり、11日の土曜日は家で寝ていたら、数人の顔見知りの人が夕方になってから町内会費を持参してきてくれた。そのうちの一人に「緊急事態宣言が出たから、延期しようと思っていたのですけど」というと、「気にしなくていいんじゃない」ということで腰の具合もまあまあ回復した日曜日、回収に回った。

 「こんな時期に非常識な!」という苦情が出るかと思っていたが、そんなことはなく、28世帯中25世帯の徴収ができた。(3世帯は不在)家によって対応はまちまちだが、気難しい感じの人はいなかった。お年寄りの世帯が多く、家にいることの多いためか、それほど感染に対する危機感はないように思われた。

 29世帯を回り、約1時間かかった。近所のおばさんに「ここは世帯数が多いから大変ですよ」というと、「でも、組長は一度やってしまえば、順番はなかなか回ってこないから、そういう面では楽ですよ」といわれた。また、以前に比べると町内全体で行う行事もかなり減ったのでその点も昔に比べると楽になっているという。ゴミ捨て場の掃除などは、軽トラを用意して巡回してやっていたこともあるそうだ。とりあえずは苦情の出ない範囲で、適当にやっていこうと思っている。(2020.4.16)




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