近所の賑わい

 僕の家の周りはお年寄りの世帯ばかりである。向かって右隣は老夫婦が二人で、左隣は老婦人が一人暮らしをしている。真向いの家はお年寄りというのは失礼になってしまうが、すでに子供たちが独り立ちした六十代前半の夫婦が暮らしているし、その右隣には七十代の老夫婦が住んでいる。真向いの左隣にはケアハウスがあり、日常的にお年寄りが出入りしている。

 したがって、普段は大変静かである。真向いの家のご主人はまだ仕事をされているようだけど、他の人たちはすでにリアイアしているようで平日は朝のゴミ出しのときに顔を合わせるくらいで、仕事を終え帰ってくると人気は全く感じられず、特に右隣の家は早寝をしてしまうということで、電気の消えているときがある。

 しかし、正月だけはこの景色が変わる。普段は離れて暮らしている子供たちが孫を連れて帰ってくるからだ。いつもは早々と電気の消える右隣の家からは、大晦日の日、夜遅く、それも十二時を超えたくらいに浴室ではしゃぐ子供たちの声が聞こえてきた。見慣れぬ車がそれぞれの玄関に止まり、子供たちが前の道路で走り回っている姿が見えたりする。

 若夫婦が子供を抱え、その後ろにうれしそうな顔をした老夫婦の姿をよく見かけるのも、正月ならではである。普段は物音一つしない家から、階段を駆け上がる音や笑い声の聞こえるのは、何となく安心する。逆に子供のいる家が、地方に住んでいるおじいちゃん、おばあちゃん宅に帰省したりして、静かだったりするから不思議な感覚になったりする。

 心配といえば、うちの左隣の老婦人である。この家だけ、訪ねてくる人を見たことがない。たまに数日、家を空けていることがあるので、知り合いの全くいないということはないと思うが、正月に誰も訪ねてこないというのは、やはり心配である。正月休みの間、僕もずっと家にいるわけではないし、むしろ出かけている時間の方が長いのだから、或いはただ単に見ていないだけかもしれないけど…。

 三が日の終わろうとしている今、近所はまた静かに夕暮れを迎えている。(2019.1.9)




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