のんびりやろうよ

 仕事が、早く終わり、退社時刻まで少し時間が余っていた。それをみた上司から、案内状を封筒に入れる作業を頼まれた。分量が多く時間内に終わるか心配だったが、急ぎの仕事ではないので、退社時刻までの間、やっていてくれということだった。僕より7〜8歳年配のEさんも手が空いていたので、二人で行うことになった。

 急ぎの仕事ではないということなので、僕はゆっくりやろうと思っていたし、当初はだらだらとやっていたが、どういうわけかEさんは何かに追われているように作業をしていた。案内状の向きを揃えて封筒に入れるだけなので簡単な作業なのだが、封筒の中にはすでに一枚別の書面が入っていて、その前に入れるため、封筒の繋ぎ目に案内状の角が引っかかり、すっすっという感じにはいかなかった。Eさんは、それにイラつき、その気持ちが僕にも感染して、のんびり気分は何処かに行ってしまった。

 僕には、Eさんが必死に作業する心持がわからない。今日中に終わらせてくれとかいう指示が出ているのなら、多少は急がなくてはいけないだろうが、時間潰しのような仕事なのである。まあ、時間潰しといっても、いつかは終わらせないといけない仕事だし、Eさんのように一生懸命にやって早く終わらせようとする方が、健全なのかもしれないが、僕はダメなのである。

 時間を読まずに、作業を一心不乱にするということが昔からできない。どんな仕事でも時間と作業量を自分なりに計算して、あまり早く終わらせないようにしているのである。それは、早く終わらせて時間の余るのもイヤだし、別の仕事を頼まれたりするのもイヤだからだ。正社員のときもそうだった。

 アルバイトに仕事を頼むとき、やはり仕事の性質と分量を考え、だいたいこのくらいの時間がかかると計算してから、依頼していた。一番困ったのは、こちらの考えている時間より早く終わらせてしまうアルバイトだった。もちろん、そういう人は優秀だし、忙しいときには一番頼りにはなるのだけど、そうなると与える次の仕事の準備をしなくてはならなくなり、もうちょっとゆっくりでもいいのに…と思ったりしたのである。

 逆にこちらが考えているより、時間のかかっているアルバイトはそれほど気にならなかった。僕の手の空いたとき、様子を見に行って何故時間がかかっているのかを判断して、アドバイスするなり、他のアルバイトや僕が手伝ったりした。もともと僕は仕事を早くやろうという観念がなかった。納期というものはあるが、その期限をいっぱいに使ってやればいいと思っていたのである。

 いまも作業は期限ぎりぎりまでにやればいいと思っていて、必要以上に早くやろうとは思っていない。だから、時間を考えずに、一心不乱に作業して、時間を余らせてしまう人は何を考えているのだろうか?と思ってしまったりする。早くやることで、時給が上がったりするのなら、わかるのだけどそういったこともないしね…。

 だが、最近になって、ひょっとしたら、僕のような考えの人の方が少数派なのかもしれないと思ってきた。というもの、周りを見回すと、ほとんどの人が一生懸命派なのである。仕事を与えられたら、時間など読まずに一生懸命に作業する方が、一般的なのかもしれない。早く終わらせて、また次の仕事、そしてまた次の仕事、時間が余ったら、身の周りの片づけ、などなど…。時間は凝縮され、ますます息苦しい環境になっていく。(2018.6.3)




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