大雪の日

 数日前から雪予報の出ていた1月22日、昼食に行くときは傘も必要ないくらいの小雨が降っていたが、1時前に会社に戻るときには雪が降り始めていた。降り方も、それなりに強く、これは積もりそうだなと思った。

 朝、会社の上司が「雪予想になっているが、早退などせず、定時まで仕事をしてください」と話した。これには、やや違和感を覚えたが、ひょっとしたら以前に、誰かが早く帰ってしまい仕事に支障の出たことがあったのかもしれない。

 しかし、他の部署はそういった‘通達’はなかったようで、3〜4時で上がったパートさんが多く、妻も4時過ぎに退社した。5時まで働き会社を出ると、すでにかなり雪は積もっていた。妻から来たメールには、電車が大混雑になっていてなかなか乗れないと書かれていた。

 駅に着くと、ホームは人で溢れ、何処に並んでいいかもわからない状態だった。その上、電車は10分前後遅れていた。5時に会社を出たのに、何でこんなに混雑しているのだろうと思ったら、退社時間を早めた会社が多かったからだと後からわかった。4時に退社した妻も電車を何本か見送ったくらいで、混乱を避けるためには3時くらいに退社しなくてはならなかったようだ。

 ホームの後ろの方が空いているかと思い最後尾まで行ったが、人で溢れていることには変わらず、たぶん列の最後だろうと思ったところに並んだ。電車は10分遅れくらいで運行していたが、一本目には全く乗ることができなかった。そして、二本目も列はほとんど進まず、また見送ることになった。

 ひょっとしたら、ホームの階段近くの列に並んだ方がいいのかもしれないと思った。階段近くであれば、下車する人も多いだろうから、列の進みも早くなると思ったのである。階段近くまで移動し、三本目の電車を待った。三本目にも乗れなかったが、下りる人も多く、次は何とか乗れそう所まで進んだ。

 ただ、前へ前と押し寄せる人たちの圧力で、電車が発車する間際になってもなかなか後ろに下がることができない。「電車が発車できませんので、あと一歩後ろにお下がりください」と駅員がアナウンスしても、後ろの人は全く動く気配がないので、仕方なく強引に一歩下がった。強引に下がったことで、やや険悪な雰囲気になったが、何とかやり過ごした。

 四本目の電車に乗ることはできたが、中は超満員の身動きの取れない状態で、電車と人の揺れに身を任せるしかなかった。家の最寄駅からのバスも大混雑だった。こちらは、何とか来たバスに乗れたが、超満員で自動ドアのステップに立っている人がいて、ドアを閉めることが出来ず、なかなか発車することができなかった。走り出したバスのくもった窓から見える風景は、対向車もほとんどなく、雪に閉ざされ、異次元にでも迷い込んでしまったような感覚に陥らせた。満員なのに乗客は押し黙り、チェーンを装着したタイヤが雪をかき、アスファルトを噛む音が車内に響いていた。

 家の最寄のバス停で降りると、雪はいくらか小降りになっていたが、道路には、スニーカーが埋まってしまうくらい降り積もっていた。家に辿り着くには長い坂を上らないといけないが、新雪なので滑ることなく、雪景色を楽しみながら歩いた。坂を上り終え、公園の前までくると、近所の主婦と小学生くらいの娘が、その先に続く階段の雪かきをしていた。「すいません」と声をかけ、階段を上り、家に着くと妻は夕飯の準備を始めていた。(2018.2.4)




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