肩が痛くなる

 旅行から帰ってきて、一週間くらい経った頃、左肩の肩甲骨の下あたりに、いやな痛みが走るようになった。普段は、それほどでもないが、歩いたり、仕事終わりのときなどに、思わず屈みたくなるくらい痛くなった。以前にも、確か妻と結婚したばかりの頃だからもう七、八年前だと思うが、やはり仕事を終えて家に帰るくらいのときに、左肩にかなり強い痛みが出た。しかし、いつの間にか、治っていた。

 また、去年、家を探していた頃、今度は右手がしびれるようになった。いつまでもしびれているわけではなく、ときどきジーンという感じで、右手の指がしびれるのである。ただ、痛みはなく、むしろ、心地いいしびれ方だったので、そのうち治るだろうと医者には行かなかった。しばらくして、異変が起きて来た。

 まず、2リットルのペットボトルを右手で持ち、コップに中身を注ぐことができなくなっていた。さらに、右手を真上にあげることができなくなった。万歳の姿勢をとったとき、右手が斜めになってしまうのである。さらに、以前は100回くらいできた腕立て伏せが一回もできなくなっていた。そして、お風呂に入るとき、何気なく、後姿を見ると、右の肩の外側のふくらみが、そぎ落とされたようになくなっていた。右の肩甲骨周辺の筋肉が委縮していたのだ。

 いつしか痺れはなくなっていたが、筋肉が委縮してしまったことに衝撃を受けた。ネットで調べてみると、腕神経叢麻痺という症状らしい。腕神経叢という神経が束になっている部分が何らかの理由で圧迫され、それの支配を受けている筋肉が委縮してしまうのである。何故、起きるのか原因ははっきりしないそうだが、風邪などのウィルスが原因ともいわれているらしい。ダンベル体操をしたり、手を上げたりという運動をするようにしたら、筋力は徐々に回復し、腕立て100回はできないが、日常生活に支障のないくらいには、筋力も復活した。

 右手の筋力の落ちていた頃、専ら左手で重い荷物を持ったりしていた。また、会社でも左手をよく使う作業があり、それらが影響して左肩の痛みが出たのかもしれないと思った。そして、また今度も、そのうち治るだろうと簡単に考えていた。しかし、なかなか痛みはとれず、疼痛の続く状態がしばらく続いていたが、仕事の特別忙しかった日、左手の人差指にしびれを覚えるようになった。

 その日、家に帰ってきてから、痛みが酷くなり、終には夜一睡もできないほどの激痛になった。五十肩かと思ったが、腕を上げることはできるし、痛くて動かせないということはない。痛みが酷くなるのは、歩いているとき、あと、寝ているときだった。翌日は土曜日だったので、病院に行けばよかったのだけど、痛みが劇的に改善することはないと思い、肩周辺の筋肉に炎症が起こっていると自分で判断して、保冷材で冷やしたりした。すると、翌日には多少痛みが緩和したが、日曜日の夜になって、また、酷く痛み出した。

 月曜日、このような状況では会社に行っても満足に働けないと思い、仕事を休んで病院に行った。家から病院まで徒歩で15分ほどだったが、肩が痛んで大変歩くのが辛かった。月曜日ということもあったのだろう、病院は大混雑しており、10時に着いたのだが、診察の始まったのは12時を過ぎていた。症状を話した後、医師は僕の首や肩を動かし、どのようなときに痛みが出るかを確かめた。そして、指にしびれの出ていることから、首に原因があるといい、レントゲンを撮ることになった。

 レントゲン写真のできるまで、リハビリを受けた。首の牽引と肩の電気マッサージである。首の牽引はダメな人と気持ちいい人とに分かれるといわれたが、僕はどちらでもなかった。ダメなことはなかったが、特別に気持ちいいということもなかったのである。電気マッサージもどこが気持ちいい強さかよくわからなかった。

 リハビリを終え、待合室で待っていると、名前を呼ばれた。レントゲン写真ができたのである。幸いにして軟骨がすり減って狭くなっているところや飛び出しているところはなかったが、首が今はやりのストレートネックになっていた。ストレートネックとは首の骨の湾曲がなくなり、真っ直ぐな状態になっていることである。そのため、肩の筋肉に負担がかかり、肩こりや頭痛の原因になったりするらしい。肩こりにより、神経が圧迫を受け、痛みやしびれがでるという。首の牽引が効いたのか、電気マッサージがよかったのか、わからないが、帰り道は、行きほど痛みはなかった。

 翌日からは会社に行けるくらいになったが、痛みと指先の痺れは今も続いている。神経の圧迫によって痛みがでているためだろうか、痛みの個所が移動してきた。始めは肩だったが、それが肘に移り、前腕に移ったりしている。指先のしびれがなくなれば、とりあえず完治ということになるのだろうか。

 痛みというものは、精神的に非常によくない。痛みからうつになったりすることもあるらしいが、わかる気がする。痛みが続くことによって、気分は沈むし、また、疲れもする。早く痛みとおさらばしたいが、年を考えると、痛みと同居することも覚悟しなくてはいけないのかもしれない。(2017.10.22)




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