妻の帰宅 2

 母の米寿のお祝いのため、ペルーに帰国していた妻が二ヶ月半振りに帰って来た。GW真っ最中の帰宅ということになったが、僕は仕事のため、向かいに行くことができなかった。当初は、会社を休んで成田まで行くつもりでいたが、ここ最近、仕事が思いの外忙しく、また、GW中ということもあり、人員も少ないようで出勤ということになってしまった。当日は、思っていたほど忙しくなく、いや、暇といってもいいほどの仕事量だったので、こんなことだったら、向かいに行けたのに…と後悔したのだった。

 五時過ぎに仕事を終え、携帯電話をみると妻からメールが来ていた。予定では二時に成田空港に到着することになっていたが、今まで時間通りだったことはなく、今回も遅れるだろうから、仕事を終えた後、上野くらいまでなら出向かいに行けるだろうと思っていたら、飛行機はほぼ時間通りに成田に着いたらしく、すでに東海道線に乗り、横浜を通過したという。結局、待ち合わせは、自宅のあるT駅ということになり、僕が駅に着いた時にはすでに妻と、いっしょに帰国した妻の姉のカズエふたりが、改札前で待っていた。元気そうな顔を見て、安堵した。

 三人で駅近くの和食レストランで食事を取った。カズエの夫のフェルナンドが成田まで車で向かいに行くものと思っていたが、車の調子が悪く、家で待っているということになったらしい。フェルナンドはここのところ疲れ気味で、車の調子というより、自身の体調が原因だったのかもしれない。次男のタカシはGWということで、バイクでツーリングへ出かけてしまったという。三人で海鮮丼を食べていると、「やっぱり日本のお米はおいしいね」とカズエがいった。

 ペルーのお米は、いわゆるタイ米に近く、パサパサしているそうである。それが、ペルー人の好みでもあるらしいが、日本で長く暮らしているカズエは、日本のもちもちしたお米の方が好きだという。妻の好みもいっしょで、また、ペルーは肉中心の食生活なので、ふたりとも久しぶりの新鮮な魚介類にも舌鼓を打っていた。

 いつもだったら、食事をした後、いろいろと話すのだけど、丸一日の空の旅でかなりの疲労を覚えているらしく、カズエはすぐに自宅へ帰っていった。僕と妻も、駅近くのスーパーで明日の朝食の食材とお菓子を買って、帰った。家に着いたとき、時刻は七時を少し回ったくらいだった。妻のペルーにいっている時は、まだ夕食を作っている時間である。久しぶりにゆっくりできる夜になった。

 暑かったので、冷蔵庫に入っていたコーラを飲み、スーパーで買ったお菓子を、リビングのソファーに座って食べた。ペルーの土産話を一通り聞いた後、テレビを点けた。しばらくすると、妻の重みを肩に感じた。妻の頭が、僕の肩に寄りかかっていた。そして、微かないびきが聞こえてきた。僕は、黙ってテレビを見続けた。(2017.5.8)




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