4年間、パートとして働いていたTさんが先日、会社を辞めた。Tさんは大分県出身の34歳の独身女性である。Tさんは横浜が好きという理由から上京し、横浜市保土ヶ谷区で暮らし始め、倉庫などのアルバイトで生計を立てていた。そして、4年前から、今の会社にパートとして勤め始めたが、休日や夜間などに倉庫の仕事も続けていたらしい。 海外旅行が好きで、ひとりで何回もニューヨークに行くほどの行動派だった。最近では韓国に一人旅をしていた。ただ、普段の彼女から、そういった雰囲気はあまり感じられず、大人しい感じの人である。仕事も淡々とこなし、派手さはないが、信頼を置くことができるタイプだった。また、あまり物事を気にしない性格なので、みんなから好かれていた。 積極的というほどではないにしても、どんな仕事でも嫌がらずに行うため、いろいろと頼まれることが多く、また、パート仲間ともうまくいっていたようである。そんな仕事も人間関係も順調だったTさんが辞めると聞いて、僕は意外な感じを覚えた。普通、会社を辞める人というのは、仕事か人間関係のどちらか、或いは両方に不満のある人がほとんどだからである。 何か、大きな出来事でもあったのだろうかと思ったが、それは違っていた。Tさんが会社を辞めた理由、それは4年間という期間だったのである。彼女は、これまで同じ職場に4年という歳月、勤めたことがなかったそうだ。倉庫の仕事は続いているように思えたが、同じところではなかったという。4年間という月日により、仕事も人間関係も固定化され、彼女の中で、いろいろな思いが広がっていたようである。 会社に勤め続ければ、とりあえず生活は安定する。しかし、Tさんにとっては安定よりも、新しいこと、自分のやりたいことに挑戦する方が、大切だったのである。あえて、リスクをとって、大海に漕ぎだす決心をしたわけだ。30代半ばという年齢も、その決心の後押しをしたものと思われる。 このまま、ずるずると居続けて、40を過ぎてしまえば、自然と守りの気持ちが強くなり、新しいことに挑戦するという活力が失われ、もやもやした思いを持ちながらも、現在の会社に依存した生活を続けていくしか無くなってしまうという怖さも感じていたに違いない。会社を辞めたくても、辞められなくなる状況に、陥りたくなかったのだろう。正解のない問題だけに、この辺りの判断というのは難しい。自分の選択した答えが、正解だと思い込んで、生きていくしかない。 うまくいかなければ、後悔することもあると思う。しかし、当たり前のことだけど、後悔したからといって、やり直せるわけでもないし、物事の好転するわけもない。自分の選択した答えを正解とするために、前に進むしかないのである。選択の問題ではなく、あとは自分のハンドリングの問題である。 Tさんの選択のうまくいくことを願いながら、自分の選択を考えている。ただ、僕の場合は、安定を望むというより、年齢的な問題から、なかなか次を見つけるのが、困難になっているという事情なのだけど…。(2016.9.25) |