ぎっくり腰になる

 会社でやや重い本を片手で持ち、ダンボール箱に入れようとかがんだとき、腰に強い痛みが走った。ぎっくり腰である。痛みをこらえて作業を終え、他の人に気取られないように、エレベータで6階にある倉庫まで行き、そこでしばらく体の様子をみることにした。倉庫は、ほとんど人が来ないので、具合の悪くなった人がよく休んでいたりする。

 腰を曲げようとすると、強い痛みが走り、かがむことはほとんど無理だった。立っているぶんには、耐えられる痛みだが、ちょっとでも体をひねるような動きをすると、これまた激痛で、呻いてしまう。歩いてみると、ゆっくりなら何とか歩ける感じだった。早退することも考えたが、明日からどうなるかわからないし、とりあえず、今は会社にいるのだから、どうにか騙し騙しで、一日乗り切ることにした。低賃金労働者のツライところである。

 午前中は倉庫で仕事をしている振りをして、どうにかやり過ごし、昼休みはいつものように近くの中華屋さんの弁当を買いに行った。上履きから靴に履き替えるのは一苦労で、誰もいないのを幸いとし、上履きのままでいった。何とか、歩けるので、それほど重症ではないようだった。

 午後のチャイムが鳴り、椅子から立とうとすると、激痛で立つことが出来ない。机に両手を着いて踏ん張り、どうにか立てたが、今度は腰を伸ばすことができず、腰の曲がった老人のような歩き方になってしまう。時間をかけ、少しづつ腰を伸ばしていった。

 午後はどうしてもその日にやらなくてはいけない仕事があるため、午前中のように時間を適当に潰すことができず、また、その作業は中腰になることもあり、非常につらかった。ちょっとした動きで、痛みが腰に電気のように走る。腰を曲げることが出来ず、中腰にならなくてはいけないときは、膝を曲げて何とか対応したが、時間と共に痛みが太ももの付け根付近まで拡散してきた。

 それでも、どうにか5時まで持ちこたえたが、家に着くと腰は鉛の重りを巻きつけられているように重く、床に寝転んだ。ぎっくり腰の常だが、一度、寝転ぶと容易に立つことができなくなる。寝がえりをうつときも同じだが、順を追って、ゆっくりと動かないと激痛に襲われるのである。風呂は厳禁なので、シャワーだけにして、この日は早めに床に入った。

 翌朝、不用意に寝がえりをしようとして、腰に激痛が走り、呻いた。寝がえりをするときは、体をひねっては絶対だめで、体全体でゆっくりと回転するように動かなくてはならない。無理をして、働いていたせいか、昨日よりも悪化しているような気がした。

 結局、会社を2日休んだ。痛みの軽減を実感できたのは、ぎっくり腰になってから2日目の午後くらいからである。実はこれが僕にとって4回目のぎっくり腰なのである。1回目は、家の掃除をして、ちゃぶ台を動かそうと持ちあげたときだった。2回目はこれも家で、くしゃみをしたとき、3回目は会社で、床に落ちていたゴミを拾おうとしたときである。重いものを持ちあげたときになるイメージだが、実際はちょっとしたことで発症する。ポイントは、不用意な力と腰の角度ということになる。

 重いものを持ちあげる時は、注意をするので、意外と大丈夫なのだが、くしゃみをしたとか、誰かに呼ばれて振り返ったときとか、モノを拾おうとしたときとか、不用意に腰を曲げ、そこに思わぬ急な力がかかると、腰の筋肉を痛めてしまうらしい。

 2日休んだ後、妻にコルセットを買ってきてもらい、何とか仕事にいくことができた。多少なりとも、動けるようになるのは、気分のいいものである。京都旅行の疲れと、ここのところ急に秋めいて涼しくなってきたので、今回のぎっくり腰はそういうことも関係しているのかもしれないが、体を労らないと、ダメな年齢になってしまったということなのだろう。(2014.9.13)




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