夏休み

 今年の夏休みはどうしようかと考えていた。現在、家の経済状態を思うと、三日間くらいの休みを取って近場に日帰りまたは一泊くらいの旅行をするのがいいような気がしていたのだけど、妻の様子を覗うと、どうも、長期(といっても一週間くらいだけど)の旅行をしたい雰囲気だったので、一週間の休みを取ることにした。

 一週間の休みを取ることを決めてしまうと不思議なもので、やはりそれが最良のような気がして来た。当たり前のことだけど、夏休みは年一回しかないわけだし、残りの人生を思うと元気でむかえられる夏というのは多くても二十数回だろうから、一回、一回が貴重になってくるわけで、現状を考え、せせこましく三日などというのは、あまりにもったいないように思えてきたのである。

 考えてみると社会人になってから、夏休みの旅行しなかった年は三回しかない。一回は、会社を辞めて長野の農家で住み込みで働いていた。二回目は、これも失業中で時間はたっぷりとあったのだけど、とても旅行する気分ではなかった。三回目は昨年で、妻がペルーに帰っていて、一人で何処か行こうかと考えないこともなかったが、気分が乗らずの家でごろごろしていた。僕の場合、夏に旅行していない年は、精神状態のあまりよくないことが多いようである。

 さて、職場の人はどうなのだろうと、数人に訊いてみると三、四日という人が多かった。何故、もう少し長い期間、せめて一週間くらい取れないのだろうかと訊いてみると、社員さんの場合は仕事があるからという理由がほとんどだったが、それは表向きで上司または同僚の目があるからというのが本当のようである。周りがあまり休まないのに自分だけ長く休めないというわけである。周りを気にする日本人の特性といってしまえばそれまでだけど、みんながすくんで動けなくなっている状態というのは、精神衛生上よくないから、変えていかなくてはいけないと思う。

 パートさんの場合は、お金の問題が大きい。ただでさえ安い時給で働いているのに、休みを取ったら低い給料がさらに低くなるというわけである。しかし、翻って考えてみれば、アルバイトやパートというのは、低い給料のかわりに自由があるわけだから、夏などは一カ月くらい休んで好き勝手にするというのが、正しい姿のようにも思える。しかし、夏休みを全く取らないというパートさんも結構いる。

 暑いから、涼しい会社で過ごす方が快適という人もいるし、休んでも何をしていいのかわからないからという人もいる。ある程度の年のいった人なら、わからないでもないが、二十代、三十代の若い人たちが、‘やりたいことがない’というのは、かなり深刻だと思う。いくら若いといっても、人生で向かえる夏の回数は、数えることのできるくらいしかない。それを、会社で働くなどという最ももったいない過ごし方は、止めてほしい気がする。

 人生は、その人のものだから、夏をどのように過ごそうが、僕に立ち入り権利はないし、そんなつもりもないけど、想い出に残る夏を送ってほしいと思う。人生は、それほど長いわけでもないから。(2014.8.10)




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