グリーンカーテン

 七月上旬、妻がナーベラ(食用の沖縄ヘチマ)の苗を二株買ってきた。これを南向きの窓際に植えてグリーンカーテンにするのだという。現在住んでいるところは、一戸建ての住宅が多いということもあるのだろうけど、何故かグリーンカーテンを作っている家が多く、通勤路に限れば六割近くの家が、さらに家の近所だとほとんどの家がやっていて、それに影響されたらしい。

 しかし、グリーンカーテンにするには、あまりにも時期が遅いような気がして調べてみたら、通常、植えつけは五月中旬くらいまでだった。妻はホームセンターの残っていた最後の二株を買ってきたそうで、一株八十円だったというから、投げ売り状態だったのだろう。これは、全く期待できないなと思ったが、ネットまで買ってきていたので、やるだけやってみようと思った。

 部屋の南側のサッシの外は、狭いながらも庭があり、外に出てみると前の住人が残していったものなのだろうかサッシの上の庇の部分にフックが二か所取り付けてあり、利用することにした。脚立に乗って調べてみると、かなり錆びついていたが、何とか動かせたので、二つのフックの間をネットの幅に広げ、ネットの両端を結びつけ、ネットの下側はナーベラーの鉢に固定して、人の出入りすることを考慮して斜めにネットを張った。そして、伸びていたツルをネットに巻き付けた。

 あまり期待はしていなかったが、ツルはどんどんと伸びていき、現在はネットの一番上の部分を超え、庇に達してしまった。これから、花が咲き、実を結ぶかどうかはわからないし、グリーンカーテンとはいかないが、見た目だけは涼しげになり、妻は満足している。

 家の近所でグリーンカーテンが一番うまくいっているのは、老夫婦が暮らしている平屋建ての家である。ここは、ヘチマをプランターとか鉢ではなく、庭の花壇に植えているのがいいのだろう、ツルは屋根まで達し、濡縁とサッシをすっぽりと覆っていてグリーンカーテンというより、グリーンシェルターという感じになっている。以前はチューリップがきれいに咲いていたし、現在はユリが美しく、入念に手入れをされているのだと思う。奥さんはそれほど見かけないが、おじいさんが好きなのだろうか、よく花壇の周りを歩いている姿を見かける。

 うちのすぐ隣の家もかなりうまくいっている。ここは広い庭があり、そこには棚が作られていて、かなり本格的だ。この家のおばあさんは元気で朝、通学路に立って、いつもパトロールをしているし、夕方におじいさんがホースで水やりをしている姿もみられる。よくよく考えてみると、グリーンカーテンのきれいに出来ている家の人とは顔を合わせることが多い。

 それに反して、グリーンカーテンのうまくいっていない家もある。ある程度ツルは伸びたが、手入れが行き届かず、途中で枯れてしまったりしている。プランターや鉢に植えた場合は毎日水やりが必要になるため、億劫になってしまうとその結果がすぐに現われてしまう。家の二軒先の家では、二階からネットを張って気合が入っていたが、ツルは一階の窓辺辺りで立ち枯れになっている。

 実際、手入れを丹念に行うとなると、余裕が必要である。忙しければ、手入れもままならなくなるのかもしれない。時間に自由な人がいるかどうかが、グリーンカーテンの成否を分けているのかもしれない。

 僕も最近はほとんど五時で上がって、家には六時前についている。庭の手入れを行っている近所のお年寄りとよく顔を合わせようになったのは、必然的だったのである。うちがきれいになったのも、家に帰って来てからナーベラーに水をやり、ツルを誘導する時間がたっぷりあったというわけである。(2014.7.31)




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