一人暮らし

 妻が帰国し、しばらくの間は一人で生活をしなくてはいけなくなった。今まで家事の分担は、食事は一日交替で作り、掃除は僕、洗濯は妻がやっていた。「男やもめにウジがわき、女やもめに花が咲く」ということわざがあるが、僕は男としては生活力のある方だと思うから、そんなことにはならないだろうけど、大変なことに変わりはない。

 やはり一番大変なのは、毎日の食事だと思う。平日は朝と夜、休日は三食とも作らなくてはならない。疲れたときはコンビニ弁当という手もあるだろうが、基本的に僕はコンビニ弁当が嫌いで、引っ越しの時を除いて、ここ十数年買ったことがない。

 毎食自炊ということになるとメニューを考えるのも大変であるが、食材をうまく使い切るという必要性も出てくる。たとえば、この前大根を半分買ったのだけど、一人でダメになる前に使い切るとなると、結構大変なのである。煮物に使い、味噌汁に入れ、焼き魚に添えるおろしにするといったような工夫をしなくてはならない。

 ごぼうなどはそれまできんぴらにするくらいだったが、ごぼう一本を一人で消費するとなると、最低でも三回くらいはかかり、毎日きんぴらでも芸がないので、一日目はきんぴら、二日目は牛肉とごぼうの卵とじ、三日目はトン汁と使い分けた。さらに、難しいのは一人分だけを作るということである。

 今まで、二人分作っていたものを一人分にする場合、材料などは半分でいいかもしれないが、調味料などは単純に半分というわけにもいかないのではないだろうか。煮魚を二人前つくるとき、今までは水を400cc入れていたが、それを一人前にしたからといって、水200ccでは少ないだろうし、加える調味料もそれまでの半分にしてしまったら薄味になり過ぎるような気がする。

 そして、一人ということで、作ることが躊躇われるものも出てくる。例えばカレーである。これまで二人のときでもカレーを作るときは、ルーの半分を使い4〜5皿分を作り、二日間で消費していたが、一人となると、一週間続けてカレーということになってしまう。ルーを半分の半分にするという手もありそうだけど、カレーは少量では美味しくできない気がする。どうしてもカレーが食べたくなったら、今までと同じ量を作り、半分は冷凍保存ということにしなくてはならないかもしれない。そして野菜炒め。二人のときでも持て余していたキャベツをどう使い切るか頭の痛いところである。

 その他で、意外と手間なのが、植木への水やりである。妻は植物が好きで、次から次へといろいろと買いこんでいたため、かなりの数がある。しかも、夏ということで、一日で土はカラカラになってしまうので、水やりはかかせない。仕事から帰ってきたら、すぐに水やりをすることにしているのだけど、ここのところ暑くて、蚊が元気になっているようで、注意しても終わったときには何か所、蚊に喰われている。

 さて、冒頭で「男やもめにウジがわき…」ということにはならないだろうと書いたが、ここ数日、今まで見かけなかったゴキブリが出るようになった。原因は、ゴミ処理の不備である。家事をやって来たといっても、やはり男では細かいところは気づかないようである。(2013.7.14)




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