やっと光開通

 引っ越して一週間後、新たな住居に光ファイバーを引く工事が入った。前回は一カ月以上待たされたので、今回は意外に早い展開に拍子抜けするような気持ちさえあったのだけど、そう簡単にはいかなかったのである。

 イヤな予感は何となくしていた。というのも、今度の住まいは戸建ての一階の約半分を借りる形で道路からかなり奥まったところにあるため、引き入れる経路が難しいような気がしていた。

 その不安は的中した。光ケーブルの来ている電線は家の斜め前方にあり、そこから僕たちが賃貸している部分に線を引き入れるとなると、家の周りをほとんど半周しなくてはならない状態だった。

 早速そのことを大家さんにいうと、当然のことながらNGとなってしまった。家に沿ってケーブルを這わせる際、金具で固定しなくてはいけないが、その箇所がかなり多数になってしまうからである。

 次に電話線口からケーブルを通す方法を試みたが、これも途中で配管が分岐しているか、途切れているらしく、うまく外に出すことができなかった。大家さんにそのあたりのことを訊くと、僕たちの賃貸している部分は以前からあったもので、その後、増築したという。光ケーブルの工事業者によると、その増築のときに、配管が外れてしまった可能性が高いのではないかということだった。

 光は無理そうだから、ADSLにしようかと、プロバイダーに電話を入れて、コース変更をしてもらおうとしていたとき、大家さんがやってきた。心配になった大家さんは家を施工した建築会社に連絡をしてくれて、配管のことを訊いたそうである。それによると、増築によって前の配管をいじってはいないから、通すことができるはずだといわれたという。

 それだったら、もう一度チャレンジしてみてからでも遅くないような気がして、再度、工事の依頼をかけた。すると、この時期は工事も立て込んでいるらしく、最短でも三週間後になってしまうといわれた。しかし、ここは待つより他になく、虚しく時間だけが過ぎていった。

 しかし、ネットのないこの一カ月、それによる禁断症状も出ることなく、不便さも寂しさもそれほど感じなかった。ネットは必需品だと思っていたが、なければないで何とかなってしまうようである。

 そして、やっと工事の日がやってきた。出勤日の土曜だったが、会社を半日で早退して、工事に立ち会った。始めに電話線の引き込み口からケーブルを通す方法を試みたが、前回と同じくうまくいかなかった。

 やはりダメかと諦めかけたが、今度来た工事の人はケーブルを家の外壁に固定するのではなく、地面を這わせ、エアコンのダクトから室内に入れましょうといった。あまり人の立ち入らない部分だし、地面を這わせても大丈夫だろうという。それだったら、家をキズつけることもないので、問題はない。

 結局、光ケーブルは家の前の電柱から結束バンドを使って雨どいを伝わせ、地面に落とし、そのまま家の裏手を半周して、エアコンのダクト穴から室内に引き込むことができた。やっと前と同じネット環境になったのである。

 しかし、一番喜んだのはペルーにいる妻の母かもしれない。うちは電話も光電話だったのでずっと使えない状態が続いていた。異国にいる娘の声を一カ月も聞くことができないというのは、かなり寂しく辛いことだったらしく、平塚に住んでいる妻の姉のところに「早く電話を入れるようにいってよ」といっていたそうである。(2013.4.14)




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