ちょっと、早過ぎます

 繁忙期に向けて会社に新しいパートさんが四人入ってきた。四人とも女性で、年齢は二十代前半から四十代の主婦までと幅広い。勤務時間は、三人が十時から五時まで、二十代の人が午後一時から八時までということだった。何でも今年は忙しそうなので、九時から五時までと、一時から八時までの二チームを作り、交代制のような形にするらしいが、一時から出社する人は新しいパートさんも含めて三人しかいないため、例年のように構想倒れに終わりそうである。

 出社初日、一時出社の人も研修ということで、四人全員十時に出てきた。まずは、仕事の概要や作業の流れなどを説明され、午後から‘適正をみる’ということで、みんな机に座って同じ作業をすることになった。四人に熟練のパートさんが付き、作業を教えている姿が見られた。

 その翌日のお昼休み、新しいパートさんはみんなそろって外に食べにいったようだった。部署のすみで三百九十円の日替わり弁当を食べていると、社員のNさんと昨日、作業を教えていたパートさんの話が聞こえてきた。話題は新しいパートさんたちのことだった。

 四人のうち、一番若い二十代の人がターゲットになっていた。どうも、昨日の作業の出来が悪かったらしい。それだけでなく、やる気が感じられないと熟練のパートさんは憤慨していた。それに対してNさんは、「前は宅配便で仕分けの仕事をしていたらしいよ。ダメかもしれないな」といって笑っていた。

 宅配便の仕事と昨日彼女のやった仕事では、その性質は全く違う。片やテキパキと動き回り、片や机に座っての細かい作業である。もし、彼女が宅配便の仕事が自分に合っていると感じていたら、適正という意味では全く違う職種に就いてしまったことになる。

 Nさんと熟練パートは、早々と二十代の人は別の作業に回すということにした。半日、いや、実質的には二時間くらいの働きぶりで結論を出してしまったのである。このようなことは、何処の会社でもあることで、以前に僕の働いていたところでも、一日だけでこのアルバイトは使えないと結論を出し、得意そうにしている人がいた。できるだけ早く人を見極め、答えを出すことが、できる人間だと勘違いしているのである。

 しかし、人を見極めるというのは、そんなに簡単なことではない。すぐにできない人というのは、不器用だったり、緊張していたりするものだ。僕の経験からいえば、同じ作業をさせても不器用な人はすぐにはできないため、努力を継続することになるが、器用な人というのは、すぐにできるようになるため、その時点で成長の止まってしまうことがあり、長い目で見ると、不器用な人の方が、頼りになる存在になっていたりする。だから、すぐに結果がでないからといって、切り捨ててしまうのは、間違いである。

 もっとも、今度のパートさんは短期ということなので、すぐに結果を出せる器用な人でないとキツイということはあるのかもしれない。だけど、わずか一日でダメと決めつけてしまうのは、ちょっと早過ぎます。(2012.10.5)




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