横浜中華街

 日曜日、もうだいぶ前に過ぎてしまったのだけど、僕の誕生日祝いという名目で妻と横浜中華街へ食事に行った。ほんとは妻がただ単に久しぶりに外食をしたかっただけである。夕方四時半くらいに家を出て、JR京浜東北線の石川町に着いた頃には、五時半を過ぎていて、辺りは暗くなっていた。

 石川町の北口から西陽門をくぐり、道路を渡って延平門から西門通りを歩き、善隣門を通って中華街のメインストリートである中華大通りに入った。中華街は初めてというわけではなかったが、その雰囲気に圧倒されてしまった。異国情緒という言葉があるが、その通りで一番身近にある異国を想わせる場所だった。

 中国食材の店、無国籍風の雑貨店、そして中華飯店、通りを歩いているだけで、ぞくぞくしてくる。店員同士は当然のように中国語で会話をしており、通りを歩いている人たちからも、いろいろな言語が聞こえてくる。ぶらぶらと周りを見ながら歩いていると、やたらと天津甘栗の試食を中国訛りの日本語で勧められた。

 店の多いため、現地に着いてから探すと目移りしてしまいそうだったので、始めからネットで店を決めていたが、あまりの人の多さと中華街の雰囲気にのまれ、夢遊病者のように左右に首を振りながら歩くだけで、肝心の店を探すことをすっかり忘れ、中華街の東の出入口の朝陽門まで来てしまった。

 仕方なく、回れ右をして、今度は気を入れて探すことにしたが、妻はもう僕は当てにならないと思ったようで、僕からプリントアウトした地図を取り、道順を確認し始めた。しかし、妻は地図を読むのは苦手で、結局、僕が探すことになったが、中華街に不案内なため、地図を見ても自分が何処にいるのかさえ、よくわからないという状態だったのである。(上記されている中華街の名称はあとで調べたもので、その場では、自分がどの通りにいるのかさえ、わからなかったのである。)

 地図をよく見ると、目的の店は中華街大通り沿いにはなく、一本路地に入ったところにあることがわかった。しかし、その路地がなかなかわからず、中華大通りを二回、三回を行きつ戻りつしながら、路地を一本一本潰すような感じで、やっと香港路にある龍城飯店に辿り着くことができた。

 思ったより小さく、町の中華屋さんといった感じで入りやすい雰囲気の店だった。店内に入ると、中国人の女性が席まで案内してくれた。メニューを見て、2500円で九品目のコースを頼んだが、その中にネットで見た大根餅のないことに妻は不満気で、女性の店員さんに大根餅の写真を見たいと言った。店員さんは気さくに大根餅の写真の載っているメニューを持って来て、妻に見せてくれた。九品を食べ終えて、お腹に余裕のあるようだったら、注文しますと妻はメニューを返しながら店員さんに言った。

 それぞれ注文した巨峰サワーとライチサワーを飲みながら、料理の出てくるのを待っていると、「前菜です」と女性店員が三種冷菜の盛り合わせをテーブルに置いた。二種類の焼豚とクラゲの炒め物、キュウリの取り合わせが美味しく、お腹の減っていたこともあってすぐに平らげてしまった。

 料理は早いペースで次々と出てきた。かた焼そばでできたバスケットの中にエビ、ホタテなどの海鮮あんかけの入ったもの、春巻き、二種類の味の楽しめるエビチリ、小籠包、黒酢酢豚。どの料理も美味しく、値段の割に量も多い。ここまででお腹は、かなり膨れ、妻は、「もう、お腹一杯」といった。そんな気持ちを察してか、店側の事情によるものかわからないが、酢豚の後、しばらく間が空き、妻といろいろと話をしているうちに、また、お腹もすこし余裕が出来た。

 次にカニの入ったフカヒレのスープがでてきた。体に沁みいるような美味しさで、ゆっくりと味わいながら飲んでいると、チャーハンがテーブルに乗せられた。このチャーハンが美味かった。スープでお腹はきつくなっていたが、箸は進んだ。そして、最後にデザートの杏仁豆腐、満足の全九品だった。

 お腹が一杯で動けないと妻がいうので、三十分くらい休んでから店を出た。店で休んでいるとき、妻が大根餅の食べられなかったことを残念がっていると、予めいってもらえればメニューの変更はできるそうで、お会計の時に、「予約をしてくれれば、同じ値段のコースでも、上海ガニなどの入ったメニューに変わりますよ」といって女性店員さんは微笑んだ。

 時刻はまだ七時半と早かったので、石川町駅には向かわず、山下公園に行った。氷川丸がライトアップされて僕たちを誘う灯台のようにみえた。外気は肌寒かったが、山下公園の海に面したベンチは、ほとんどカップルに占拠されていた。犬の散歩をしている人や夜釣りをしている人もいて、昼に比べるとのんびりしていて和らいだ気持ちになれる。

 気分がよくなったので、大桟橋に向かった。ここから見ることのできる赤レンガ倉庫、ランドマークタワー方面の夜景は横浜で最も美しい夜景のように思える。ただ、お腹の冷えたせいか、食べ過ぎのせいか便意をもようして、あまりゆっくりと夜景を楽しむことができず、妻にイヤな顔をされた。

 大桟橋から赤レンガ倉庫、そして汽車道を通って桜木町駅から、電車に乗った。かなり歩いたので、足が少し痛くなった。(2011.10.13)




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