町内会

 4月から1年間の任期で町内会の幹事をやることになってしまった。幹事といっても町内会はいくつもの小グループに分かれていて、僕の管轄は近所の8家族だけだ。幹事はこの8家族が回覧板の周る順に、持ち回りでやることになっていて、何となく昨年当たりから来年は自分の番なのではないかと嫌な予感はしていた。

 まず、最初の仕事は町内会費の徴収である。ひと月300円の12か月分、3600円を7家族分集めなくてはならない。引っ越してきた当初、いきなり当時の幹事さんが町内会費の徴収にやってきたため、「何の挨拶もなしに、いきなりお金を取りに来るなんておかしい」と妻が憤慨していたことが想い出される。

 さらに、その幹事さんは「向こう三軒両隣には何か品物を持って挨拶に行くように」とほとんど命令調で言ったため、すでにそれを済ましていた妻はさらに頭に来て、彼女の帰った後、僕に当たり散らし、町内会が大嫌いになってしまった。したがって、今回、妻の援助はほとんど期待できない。

 ペルーには町内会なるものは存在しないようで、妻から「町内会って何をするの?」と訊かれたが、よくわからず、「回覧板を回したりするんじゃないか」と答えておいた。そもそも町内会費は何に使われるのだろう?会社で働いている主婦の人に訊いてみたが、彼女もよくわからず、役員さんのお茶菓子じゃないですか?と笑っていた。

 初会合の2日前、仕事の終わった後、町内会費の集金をした。幸いなことにご近所さんは2世代同居の家が多く、そうでない場合は年寄り夫婦だけなので、全ての家が在宅していて、集金は1日で済んでしまった。しかし、その対応となると人それぞれで、面白かった。

 「ご苦労様です」というような感じで気持ちよく3600円おつりなく払ってくれた家は2軒で、「まだ時期が早いんじゃないの?」と難癖をつけられたり、10000円を崩してほしいと頼まれたり、「あなたが幹事さんやるの?」と変な目で見られたり、「あなた何処の人?」などと僕のことを全く知らない人もいた。隣の奥さんは何度も顔を合わせていたので気さくに「そんなに難しくないから、がんばってね!」と言ってくれた。

 やっと、一仕事終えたと思って家に帰り、妻の炊事の手伝いをしていたらチャイムが鳴った。こんな時間に誰だろうと思って出てみると、町内会の世話役の人だった。

 「これ各家庭に一部ずつ配っておいてください。こちらは回覧板ね。それと、あなたの受け持ち地域で火災報知機を注文している家が2件ありますから…」と火災報知機の受け取りと代金の徴収を頼まれた。指定された日に火災報知器を僕が受け取り、それを注文した家まで持って行って代金をもらい、次の幹事会の日にその代金を納入してくれという。そんなもの注文した当事者とやってくれた方が、はるかに手っ取り早い気がする。何で幹事をかませる必要があるのだろうか?無理やり幹事の仕事を作っているとしか思えない。

 さて、その幹事会である。時間を見ると7時から8時くらいとなっていて、地域の問題点でも話し合うのかと思っていたのだけど、実際はただ町内会費の受付だけで、集めたお金を係りの人に渡して金額を確認してハンコをもらうだけで、わずか5分で終わってしまった。帰る時に出口付近に立っている役員さんから「ご苦労様でした」とティッシュひと箱を貰った。(2009.4.11)




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