お宅拝見

 平塚に住んでいる義姉夫婦が家を買ったというので、日曜日、妻と見学に行って来た。その家は築20年を過ぎているようで、義姉は「古い、汚い」とやたら強調し、前にひとりで見に行った妻も「やはり古かった。リフォームする前にHも見た方がいい」ということだったので、どれほどのものかと興味津々だった。

 早いうちに行ってゆっくりと見たかったのだけど、日曜日はいつものように家事が立て込んでいて、義姉の‘新しい家’に着いたときは4時を過ぎていた。辺りは薄暗く、家の外観はそれほどはっきりと見えたわけではなかったが、思ったよりもずっときれいに見えた。玄関に周ると、義姉はすでに着いていて、掃除をしていた。

 二階建ての和洋折衷の作りで一階は玄関を入り、ドアを開けると8畳くらいのリビングがあり、その奥がキッチンで義姉は対面式にしたいと言った。リビングの南側に4畳半の和室、キッチンの横に浴室とトイレがあった。4畳半の和室には神棚と仏壇があり、また窓のひとつが隣の家の壁と面しているため、少し陰気な感じがした。ただ、畳が相当焼けていたので、昼間は南側の窓から、かなり陽が入るようだ。一階を見学しているうちに、義兄も仕事を終え、バイクでやってきて二階を案内してくれた。

 二階に通じる階段は玄関を入ってすぐのところにあり、それを上がると洗面台、その奥にトイレがあった。二階は6畳の洋室と8畳の和室があり、共にバルコニーが付いていた。特に8畳の和室の方は、バルコニーに通じるところが3畳くらいのフローリングになっていて、健康器具など置くには良さそうだった。階段の上と横、そして洗面台の上、6畳の洋室には洋式の照明が配されていて、落ち着いた雰囲気だった。8畳の方は長男、6畳の方は次男の部屋にする予定だと義兄は言った。

 外観はあまり感じなかったが、家の中はかなり古く、畳と襖は陽に焼けていて、全部変える必要がありそうだった。義兄は意外と細かい人で、トイレの段差が危ないとか、照明が多すぎて電気代が高くなりそうだと心配していた。階段の高さなども気に食わないようで、直したいようだったが、義姉に「そのままで大丈夫!」と言われていた。

 一階のリビングにあるまだ掛け布団のない掘り炬燵に4人で入って、義姉が買っておいてくれた肉まんとオレンジジュースをいただいた。「お金、かかるね〜」と義兄はポツリと言った。

 義兄は現在、自動車の部品を作っている工場で派遣労働者として働いている。2交代制で一週間毎に昼夜の勤務が変わるらしい。日曜日は隔週で掃除のアルバイトをしている。この日もそのアルバイトを終えてから来たのだ。子供は二人とも男で、上が大学2年生、下は中学3年生だ。家を買うことにしたのも、現在大学生の長男は就職が決まれば通勤に便利なところで一人暮らしをする可能性が高いため、それまでの時間、ゆったりとした空間で親子4人暮らしたいと考えたからだという。春くらいから物件を探し始めたそうだ。

 しかし、ここにきて自動車業界は大変な事態になってしまった。アメリカのサブプライムローンに端を発した世界的な景気の減速によって、自動車業界は大きな影響を受け期間従業員等の非正規労働者を削減する動きが相次いでいる。トヨタ自動車は約6000人いる国内工場の期間従業員を3000人程度まで半減するようだし、日産も全国に約2000人いる派遣社員を約500人に減らすというし、ホンダも埼玉工場で期間従業員270人を削減、マツダとスズキもそれぞれ派遣社員を1300人と600人減らすという。

 義兄の会社もその影響を受けていて、残業がなくなったそうだ。大学生と来年高校に入学するふたりの子供をかかえ、それに家のローン、義兄の肩にそれらが重くのしかかる。夜勤があるというだけでも大変なのに、休みが隔週の日曜日だけというのはきつい。「腰が痛いね」とさかんに言っていた。

 トイレの段差や階段の高さを気にしていたのも、或いは体の疲れから無意識のうちに気になっていたのかもしれない。「年をとったときのことも、考えておいた方がいいよ」と義兄は言っていたが…。(2008.11.29)




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