年の瀬に想うこと

 仕事納めの日、忘年会も終わり、居酒屋の外に出ると雨が降っていた。それほど強い雨ではなかったけれど、朝の天気予報を見て傘を用意していたから、それを差して家まで帰った。

 家に帰ってふとんを引き、寝床に入る頃には雨はかなり強い降りになっていて、雨音がよく聞こえた。昼間の雨は憂鬱になることもあるけど、夜に雨の音を聞きながら床に入っているとなんともいえない安らぎに包まれる。

 暗い部屋の中、ただ雨の音だけが耳に聞こえてくる。まるで別の空間に、自分が流れていくような感覚になる。しかし、横から聞こえる僕より遅くまで飲んでいた妻の普段よりやや大きめの寝息が、流れ出そうとする僕を繋ぎとめる錨の役目をしている。

 ふと、会社でのことが頭に浮かぶ。休憩室でたまたまいっしょになった妻に僕は何も感じなくなっていることに寂しさを想った。妻がまだ恋人だった頃は、休憩室でいっしょになることが待ち遠しくて、そうなるとただうれしかった。

 ちょっとしたことで、けんかになって彼女の機嫌を直そうと以前は腐心したものだけど、現在は自分の感情を剥き出しにして彼女のキズをさらに深くしているように思う。何故だろう?結婚したことにより、以前ほど彼女に対して気を使わなくなったということなのだろうか?釣った魚にエサはやらないということなのだろうか?

 自分で自分を酷いとわかりながらも、それを直せないというのはどういうことなのだろう。どうでもいいプライドと妙な照れと、それから、それから、…。素直になれればもっと楽になれるのに、もっと強くなれるのに。結局、自分の人間的な弱さが全ての原因のように思う。

 雨はまだ降っている。明日の朝、起きたら太陽は眩しく輝いているのだろうか?それとも雨はまだ降り続いているのだろうか?(2007.12.30)




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