仕事帰りに妻がパートをしているスーパーに寄った。彼女はそこでレジを担当している。まだ6時を少し過ぎたばかりなのに、辺りはすっかり暗くなっていて物淋しい気持ちになった。冬が近づくといやになるのは、寒くなるよりも日が短くなるからだ。 妻の働いているスーパーは僕の勤務先から徒歩で10分くらいのところにあるが、夜風が冷たくて2回くしゃみが出て身震いしてしまった。ちょっと風邪気味なのかもしれない。会社の中と外の気温の差が広がっていく。 スーパーの入口辺りから中を伺うと妻は一番手前のレジを打っていた。スーパーの中は夕飯の買い物をする主婦や会社帰りのサラリーマンで混んでいる。入るのに何となく気後れしてしまったけど、妻の喜ぶ顔を見たい気がして中に入った。 …
朝、先に家を出る妻は 妻のレジの横を通るとき、彼女と目が会った。少し照れたような顔をしていた。特別サンマが食べたいわけではなかったが、僕は生真面目にそれを探した。鮮魚売り場の金盥の中の氷水の中に何匹もサンマは泳いでいて、特売を示す表示がPOP文字で書かれていた。近くにあったビニール袋を引きちぎって、その中に一番美味しそうに見えたサンマを一匹入れた。そして、明日の朝食用にチリ産の二匹のサケが入ったパックをカゴに入れた。
家にニンジンが余っていたことを思い出し、きんぴらごぼうでも作ろうかと野菜売り場に行き、ごぼうを一本手に取りレジに向いかけたが、ちょっとお菓子もほしい気がしてポテトチップスとマカデミアナッツの入ったチョコレートをカゴに入れ、彼女の前に出した。 スーパーを出て家路に着いた。少し夜風にあたりたい気がしたので、家まで歩いて帰ることにした。サンマ一匹とサケが二匹、ごぼう一本にポテトチップスとチョコレートの入ったレジ袋は軽くて、気持も少し軽やかになった気がした。(2007.10.26) |