いろいろな出会い

 先日、群馬に住んでいる従姉から電話があった。
「今、付合っている人がいるんだけど、その人、A信用金庫に勤めているの。それでね、そのA信用金庫ってどうなの?信用金庫だから大したことないのかしら?」

 彼女は僕よりひとつ年上なのだけど、未だに独身である。現在は結婚式の司会などで生計を立てているが、若い頃は地元テレビ局のレポーターをやっていたこともある。もともとアナウンサー志望だったのであるが、それが叶わずそれに類似した仕事に進んだのだ。

 仕事柄、顔は広く、地元のロータリークラブなどからいろいろな人をこれまでも紹介されている。前にお坊さんを紹介されたことがあり、彼女はすぐに断ってしまったのだけど、祖父のお葬式に訪れたその坊さんが意外に男前で、しかも国産だけど高級車に乗っていて、後に檀家の数も多いことを知り、口惜しがっていたこともあった。

 その後、あまり男性の噂を聞かなくなったのだけど、昨年の冬から今年に春にかけて両親が相次いで他界し、独りになってしまった彼女は寂しくなったのかもしれない、真剣に結婚を考えるようになったようである。

 ロータリークラブから紹介された男性は東京在住で、過去に1回結婚歴があるようである。その人が勤めているA信用金庫は東京南部を中心に南関東のみで業務を行なっているため、群馬に住んでいる彼女はその優劣がわからず僕に電話を掛けてよこしたというわけなのである。

 「いや、信用金庫っていってもAはかなり優良で健全な信用金庫だから、何の心配もいらないよ」と僕がいうと、彼女はちょっと驚いたようだったが、安心したようだ。
 「東京に住みたいとも思っているのよ。こっちは寂しくて…」と彼女は言った。両親がいなくなってしまった今、大きくなってしまった田舎の家は余計にさみしく感じられるのかもしれない。

 同じ女性でも従姉とJさんのそれぞれの出会いというものを考えてみると面白くなる。片や高学歴・高収入の銀行マンとお見合いで知り合い、片や薄暗い職場で時給1000円で働いている冴えない男を好きになり…。最終的にどちらが幸せなのか、それはそれほど鮮明でないような気もする。美しいのは明らかに僕たちの方に思えるけど…。(2006.10.26)




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