モノローグな人

 同じフロアーで働いているNさんがどうも苦手である。Nさんは僕より1年後に職場へ入って来た1つ年上の既婚の女性なのであるが、ここのところ彼女とある一定の時間を共有すると、かなりの疲労を覚えるようになった。その原因はいくつか挙げられるが、まず彼女は常にハイテンションであるということだ。

 職場の仲間とお昼をいっしょに食べているとき、Nさんがいると彼女だけが、しゃべり続けているという状態になり、周りにいる者はひたすらその話の聞き役になっている。間がなく畳掛けるように高音でしゃべるので、その声を聞いているだけでぐったりとなったりする。

 情報通の彼女はいろいろなところから会社の人々の話しを仕入れてきている。誰よりも早い情報を掴まないと気が済まないようなのだ。その話しがまだ面白ければいいのであるが、どうでもいいようなことばかりで、他人のアラをあげつらう内容も多いので、それほど楽しいものではないのだ。

 「営業の伝票の打ち方が悪い」とか「Aさんの態度にむかついた」とかいう話を延々と繰り返されると、ついつい「もう、いいよ!」と言いたくなってしまう。そして決定的に辛くなるのは、彼女の話しはほとんど独白であり、会話のキャッチボールが成り立たないことだ。

 Nさんが何かを話す。それに対して、誰かが意見を挿む。しかし、彼女はその意見に対しての意見を言うということがほとんどないのである。彼女は常に自分の言いたいことだけを一方的に話すだけなのだ。したがって周りにいる者は彼女の話を納得しようが、しまいが、頷くだけであまり口出しをしなくなってしまった。

 また他人が出した話題には興味のわかない性質のようで、それに対してNさんが絡んでくるということはなく、そっぽを向いていたりする。彼女はあくまでも自分が中心でいないと、居心地が悪くなるようなのだ。そして最近、彼女に少しづつ変化が現れてきた。その言動が明らかに会社側に立ったものになってきているのである。

 Nさんの言葉は、仕事のできない者、あまりがんばらない者、割り切って仕事をしている者などに対して厳しくなってきたように感じるのだ。新人が入って来ても、1日であまり使えないと結論を出してしまったり、1度間違えただけで大袈裟に批判したりとただ相性が合わないというだけでなく、彼女の話が鼻について仕方なくなってきた。

 このことは他の人も感じているようで、Nさんといっしょに入ったKさんなどは彼女を避ける素振りが見うけられるようになってきたし、Jさんと僕はふたりになったときなどお互いに「疲れるね」などと話すことが多くなった。

 しかし、こういう人は意外と多いらしい。日本人の会話はほんとの会話でなく、独白の積み重ねという意見もある。それにしてもNさんは行き過ぎであり、どうやって付合っていけばいいか頭が痛い。自分の意見ばかり主張せず、周りの人の話しに耳を傾け、会話を楽しめるようになってくれればいいのだけど…。ちょっと無理かな?という気がする。(2006.9.9)




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