木曜日の昼前、Jさんに仕事を頼まれた。しかし、僕はいろいろと忙しく、冷たい態度をとってしまった。それからJさんの僕に対する態度がおかしくなった。もともと仕事中はそれほど話す機会もないのだけど、明らかに僕を避けていることが感じられた。しかし、僕としてはそれほど大したことでもないし、放っていけばそのうち機嫌も直るだろうと気軽に考えた。 金曜日、Jさんの態度はなお頑なだった。僕は戸惑った。今までJさんと付合ってきて、例え頭にくることがあっても、それを引きずるようなことはないと思っていたからだ。僕の態度は確かに冷たかったかもしれないが、忙しかったことを考えればそれほど酷いものとは思えない。にもかかわらず、Jさんは話しどころか、目を合わそうともしない。一体、彼女はどうしてしまったのだろう。
昼休み、弁当を買いに行こうとしていたJさんを捕まえ それにしても、大人の女性だと思っていたJさんのこの態度はどうにも僕にはわからなかった。そういえば以前いっしょに飲んだときJさんが「生理のときは怒りっぽくなっちゃうの。すぐいーってなっちゃう」と言っていた。或いは生理のせいなのかな?と思ったりもした。 家に帰ってから、自分はそんなに悪いとは思わないけど、こういう場合はとりあえず謝っておいた方がいいと思ってJさんにメールをした。このことを主題にしてしまうと、事態がさらに深刻化する可能性があると思い、気を使いながら書いた。
このメールのおかげか、月曜日はいつものJさんに戻っていた。「難しくなってごめんね」と言われた。ここのところ仕事で失敗が続いていたJさんはかなり神経質になっていたそうだ。それで、きっちりと仕事をしたかったらしいのだが、それが僕に伝わらず「何でHさんはわからないのかね」と頭に来たという。いつも頭に来ると、わーっというJさんだが、このときは職場だったため、そういうわけにも行かず、心に溜めこんでしまったようだ。 男女の間だけではないだろうが、何でもないようなちょっとしたことで事態が思わぬ方向に転がりだし、関係がこじれたり、場合によっては壊れてしまうということはよくあることだと思う。これはとても怖いことのように感じられるが、よくよく考えてみるとちょっとしたことで壊れる関係なら壊れてしまった方がいいように思える。ちょっとしたことで壊れる間柄なら、所詮その程度の付合いでしかなかったということなのだ。 壊れるものはどんなにうまくやっても、いつかは壊れる。しかし、お互いにかなりの努力をしなければ、うまくいかないのもまた男女の関係なのだ。僕は、それを怖れる。努力すればいい間柄になれたのに、それをしなかったがためにだめになってしまうというのは悲しい。 ちなみに、Jさんは生理ではなかったらしい。(2006.5.17) |