お風呂の羽虫

 僕は長湯である。社会人になってから、そうそうゆっくりも入っていられなくなり、多少は短くなったけど、学生の頃はゆうに1時間を超していた。自宅ばかりでなく、親戚の家に遊びに行った時などもそうだったため、心配されて見に来られたり、風呂の中で何をやっているんだと訝しがられたりしたこともあった。

 自分としては、それほどゆっくりと浸かっているという感じはなく、いたって普通に入っているつもりなのだけど長くなってしまう。まず、シャワーを浴びてから浴槽に浸かりのんびりと考え事などをして、体が温まったら出て、洗顔して、髪をシャンプーして、そして体を上から順に洗っていく。そして、また浴槽に入り、歯を磨く。歯を磨き終わったら浴槽を出て、シャワーを浴びて終わりである。どうも長湯になってしまう理由は、浴槽に浸かっている時間の長さが原因しているようだ。


 明日は歴史的な1日になりそうだ。競馬の話しである。ディープインパクト、シンボリルドルフ以来21年振りの無敗の三冠馬の誕生となりそうである。

 僕は子供の頃から競馬をよく見ていたため、三冠馬はミスターシービーから知っているし、自分の中での最強馬はシンボリルドルフだった。しかし、ディープインパクトを見て、それが変わってしまった。間違いなく、僕が見た中ではディープインパクトが最強である。ルドルフも負ける気が全くしない馬であったが、ディープインパクトはそれ以上であり、どんな勝ち方をするのかと、それが楽しみになっている。

 圧倒的な一番人気がいるのだから、ちょっと前なら馬券的な妙味はあまりなかったのだけど、今は3連単という1〜3着までを順番通りに当てるという馬券があり、それをずっと考え、風呂の中でもあーでもない、こーでもない、これは面白いかもなどと考えていた。

 ふと湯船の中を見ると小さな羽虫が浮かんでいた。まだ湯の上に落ちたばかりらしく、動いているのが見えた。僕は羽虫が浮かんでいる辺りの湯を右手ですくい、羽虫が落ちないように注意しながら、湯だけを指の間から逃がした。右手に羽虫だけが残ったが、動いてはいない。手に残った水分に捕まっているのかもしれないと思い、左手の人差し指をタオルで拭いてから、羽虫をやさしくそちらに移した。

 人差し指の爪の先に乗った羽虫は、少し動いた。そして、よく見ようと指の角度を変えた瞬間、飛び立って湯煙の中に見えなくなった。

この羽虫が幸運を運んできてくれればいいなと、都合のいいことを考えた。(2005.10.23)




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