日曜日、同じ職場で働いている日系ペルー人女性のJさんを誘って江ノ島へ行った。Jさんは、僕よりひとつ年下の−いやいや年齢の話しは止めておこう−で、8月末に誕生日を向えたのだけど、その頃、僕はあまり体調がよくなくて、今もあまりよくはないのだけど多少は回復したのでお祝いも兼ねて誘ったのである。 何処に行こうかと、前日まで迷っていて、初めは鎌倉にしようかと思ったが、台風のせいか蒸し暑そうだったので、あまり歩かないで済みそうな江ノ島にした。しかし、生まれて以来ずっと東京で暮しているのだけど、僕は江ノ島に行った記憶がなく、楽しみである反面少し不安だった。 12時にJさんが住んでいるK駅の改札の前で待ち合わせをして、東海道本線のホームに降りた。東海道本線については沿線にJさんのお姉さん夫婦が住んでいることもあり、Jさんは詳しく、僕は彼女に従った。
しばらくすると、ホームに特急踊り子号というのが入って来た。 まあ、乗ったことがあるというのなら大丈夫だろうと、僕たちは乗り込んだ。車両の一番前のシートが空いていたので座り何気なく上を見ると、そこには‘指定席’とある。ほんとに大丈夫なのかなと不安になったが、もう電車は走り出していたので仕方ない。 僕の不安を他所に、Jさんは余裕で、12月に受ける日本語能力試験のガイドを開き、僕に見せた。Jさんは約20年前にこの試験の3級を受けて合格していて、今回は2級を受験しようと思っているらしい。願書の提出が月曜日までなので、できれば今日にでもポストに投函したいという。
「それって、月曜日の消印まで有効っていうことかな?」
まだ、Jさんが見落としていることがないか、そのガイドを読んでいる時、車内放送が入った。 「大丈夫だった」 「それは運がよかっただけだよ」 しばらく経ってやってきた普通電車に乗り、僕たちは藤沢まで行き、そこから江ノ電に乗り、江ノ島に向った。Jさんは江ノ電に乗るのは初めてのようで、「かわいい電車」と喜んでいた。 江ノ島駅で降りると、強い陽が空から降ってきた。今日は曇りとの予報が出ていたが、どうやら外れたようである。普通なら喜ぶところなのだけど、とにかく暑い。気温は真夏の頃に比べれば、ましになったような気はするが、湿度が高くムシムシする。
「絶対35℃はあるね」と暑さの弱いペルー育ちのJさんは早くもハンカチを手に、顔の汗を拭いている。 江ノ島は観光地らしく、駅前からすでにお土産物屋が続いている。汗を流しながら、その細い道を歩き、地下道に入り、江ノ島大橋を渡った。サーフボードを手に持った人や、リック姿の外国人、若い女性のグループなどが、歩いている。途中に屋台が何軒か出ていて、イカや蛤、サザエなどを肴にお酒を飲んでいる人もいた。 江ノ島大橋を渡り終えると、左手に大きなお土産物屋があり、サザエ、蛤、イカ、シラスなど海の幸が売られており、また店の前ではそれらを焼いていたりして、食欲をそそられた。
このお土産物屋の右横に青銅の鳥居があり、江ノ島神社への参道になる。参道の両端はお土産物屋や食事処がびっしりと並んでいる。僕とJさんはできるだけ、日陰になっているところを歩いた。しばらくすると瑞心門という大きな門が現れ、神秘的な雰囲気になる。長い階段が現れ、Jさんはちょっと憂鬱そうな顔をした。 息が少し乱れた辺りで、江ノ島神社に着いた。ここの賽銭箱は変わっていて巾着の格好になっている。僕はその中に2円だけ入れて手を合わせ、Jさんはいくら入れたのかはわからないが、そこに書かれているお参りの方法を忠実にやっていた。以外と信心深いようである。つづく…(2005.9.10) |