イメージと現実

 北海道から昨晩、帰ってきました。大洗港に19時にフェリーは着いたのですが、そこからバイクで自宅まで4時間近くかかり、家に着いたのは23時少し前でした。バイクは下船が最後の方になってしまうものですから、実際に走り始めたのは19時半近かったのではないでしょうか。ただ、道は流れていて、かなり順調でした。

 関東は暑いと覚悟していたのですが、昨日、今日とまあまあ涼しくほっとしています。ただ、雨が降りそうなので、テントや寝袋などが干せないのが残念です。旅行記に詳しいことは書きますが、北海道も暑かったです。とはいっても、東京のような殺人的なものではもちろんなく、木蔭に入れば涼しく、また夕方になればこれまた涼しくなるので寝苦しいということは、あまりありませんでした。

 今度の旅行で思ったことは、ヨーロッパの人々が過ごすバカンスのようにのんびりとしたものにしようということでした。朝になったらテントを撤収してすぐに、次の目的地に向って行動するといったことは出来るだけ止め、日がな一日にのんびりと過ごし、時の流れをゆっくりとしたものにしたいと思っていたのです。

 朝、起きたらキャンプ場の周りを散策でもして、お湯を沸かし、紅茶でも入れて…などといろいろと夢想していました。その夢想の1つは、草原にある大きな木の木蔭に手足を思い切り伸ばして寝そべり、青い空を流れている刷毛ではいたような雲でも見ながら、知らぬ間にすやすやと…というものでした。

 今まで草原に寝そべったという経験がないわけではありませんでしたが、いつもほんの短時間で終わっていたのです。短時間で終わってしまった理由というのは幾つかありました。まず相棒がいた場合でした。

 友人といっしょの場合、このような気ままなあまり意味のない行動はどうしても抑えられます。複数での旅行では計画を大切にして、それに沿った行動をしないとケンカの元になったりするのです。また、時間の制約が強い場合、一人旅でも「無駄」と思われるようなことはしづらくなります。

 しかし、今回は一人旅で何の計画もなく、時間はたっぷりある、気が済むまでいつまでも…と考えていたのです。そして、そんな機会が2回ありました。

 1回目は本別町の静山キャンプ場でした。テントを張り終え、夕食まで3時間近く時間ができたのです。早速僕はテントからマットを取り出して、その上に横になり、買っておいた葡萄を食べながら文庫本を読むことにしました。陽を遮ってくれる木もいっぱいあり、風も涼しく吹いていました。

 本を読むことに疲れ、しばらく仰向けに横たわっていると、体がむずむずとして来ました。葡萄の甘い匂いに誘われたのか、アリが体の上を這っていました。一匹払い除けても、また次のアリが体に上ってきます。さらに、数カ所、腕や足を蚊か何かに刺されたらしく、痒くてたまらなくなりました。ゆっくりと長い時間、横になるということはできませんでした。1時間も立たないうちに、僕はテントの中に入ってしまいました。

 もう一度は最終日です。フェリーの出航時刻は夜遅いので、この日も時間はたっぷりとありました。場所はフェリーの発着地である苫小牧まで50Km足らずのところにある滝の上公園でした。ここに2時過ぎに着いた僕は、しばらく辺りを散策して、メロン味のソフトクリームを食べました。そしてどうしようかと思っていると、芝生とそこに点々と生えている木が目に入ったのです。

 長い旅の疲れが出ていた僕は、ジャケットを脱ぎ、その上にごろっと横になりました。天気は最高で、正に青い空に白い雲が流れていたのです。近くでは、小さな女の子と若いおかあさんが遊んでいました。とても気持ちよく、うつらうつらとし始めた頃、左手首に強烈な痒みを覚えました。またも、虫に刺されてしまったのです。上半身を起こしてみると、それ以外にも数カ所虫に刺されたような痕がありました。

 上の2箇所は、実は大変虫の少ないところなのです。多いところでは、数十匹の蚊が一気に寄って来るといった場所もあります。気候や地勢上の理由で虫が少ない自然の美しいところはありますが、それが全くいないというところはないのです。虫が全くいないところを探せば恐らく都会の近代的なビルの中ということになってしまうでしょう。

 自然の美しい草原で体をいっぱいに伸ばして寝たいという願望は、ある程度虫に刺されるということを引き受けなくては成立しないことだったのです。(2005.8.12)




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