夏の準備

 バイクを点検に出した。ちょうどこの6月がバイクの保険更新の時期にあたっているため、だいたい毎年そのついでに点検を頼んでいる。今年は前輪のブレーキパッドがかなり減っていたため、その交換もお願いした。

 そして、バイクの点検から夏の旅行準備が動き出す。今年も、北海道にバイクで行こうと思っている、期間は今までバイクツーリングとしては最長になる3週間を考えている。7月下旬から8月中旬まで、北海道の一番暑い季節だ。

 正社員として働いていた頃は考えられなかったことだ。まともな会社員だと、3週間の休暇などなかなか取れるものではない。厚顔無恥でヤクザな僕でさえ、会社員時代の最長の休みは12日間だった。

 よく、正社員になれないと悲観的になっている人を見かけるけど、そんなに悲しむこともないように思う。時間的には自由になれたり、仕事に多くのエネルギーを費やすこともないので、自分の愉しみを持っている人にとってはアルバイトとかパートの方が楽しい人生を送れるような気もする。もちろん、それに伴なうリスクは覚悟しておかないといけないのだけど、それは程度の違いこそあれ何をやっていても同じだし、のほほんと自分の速度で歩いていけばいいし、疲れたら休めばいい。

 この夏、長期で旅をしたくなったのは、昨年、北海道で出会った人たちの影響だ。霧多布で約1ヶ月間、花の写真を撮りながらのんびり過ごすと話してくれた老夫婦の人たちや、札幌の恋人と約3週間に渡って道内をバイクで周っていた東京在住の無職の男性などから、ある程度長期で滞在型の旅もいいものかもと思った。期間を長くするというのは、ただ単に時間が増えるというだけでない‘何か’を感じることができるような気がする。

 今までは、キャンプ地で連泊してというのは、あまりなくほとんど一夜寝ただけで次の目的地を目指していたが、今年はひとつのところに3連泊くらいして、辺りを散歩したり、風景のいい場所で日がな1日ぼんやり過ごすといった時間をゆっくり使う旅にしようなどと思っている。でも、行ったら行ったで、昨年のように「あそこにも行きたい、ここにも行きたい」となるかもしれないけど。

 それから、台風の影響で壊れてしまったテントのポールの修理も頼まないといけないし、新しいバイクウエアもほしい。そして、あとは料理のレパートリーを広げ、豊かなキャンプ生活を楽しめるようにしないとね。困ったらレトルトカレーというのは、できるだけ避けたいと思っているのだけど…。

 そして、宿屋とか農家のひとり娘と知り合って、そこの主人にでもおさまり、静かに暮せれば…などとまず絶対にありえないことまで夢想していたりする。鬱陶しく、なかなか希望が見えない日常から逃れたい気持ちが強いから、こんなことを思ってしまうのだろう。

 日常は確かに、重く気だるい。つまらないことを気にして、怒りや焦燥感、嫉妬心が心に溜まり、それが少しづつこぼれて行く。そして、自分が空気中に溶け出し、拡散して形がなくなっていく。旅に出れば、失った自分を少しでも取り戻せるような気がする。壊れてしまった自我の再生…。

 関東は今日辺りから梅雨に入ったようだ。今は、点検を頼んだバイクをショップに取りに行くとき、雨が落ちていないようにと思うだけだ。(2005.6.12)




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