2003年4月に発売されたブラーのシンク・タンクというおよそイギリスのロックバンドとは思えない音のアルバムを聴き続けているうちに、その前段となった音楽を自分の耳で確かめたくなり、インターネットで久しぶりにCDを買った。マリ・ミュージックというアルバムである。 マリ・ミュージックとはイギリスのロックバンド、ブラーのメンバーであるデーモン・アルバーンが、2000年7月に西アフリカのマリを訪れ、そのとき現地のミュージシャンたちといろいろな場所でセッションを行ない、その録音テープを作品化したものである。 シンク・タンクのライナー・ノーツによってマリ・ミュージックを知った僕は、CD屋さんに行くたびに注意深く探したのだけど、どの店でも発見することはできなかった。マイナーな作品ではあるし、日本では全くといっていいほど話題になっていなかったから、見つからないのも仕方ないなと半分諦めていた。 発売されて2年以上経つのにシンク・タンクというアルバムは素晴らしく、僕の心に入って来て、今でも毎週のように聴いている。アフリカンなハーモニー、アラブ音楽のような独特のリズムとギター、美しいメロディ、優しいデーモンのボーカル、そして愛と平和の詩…。そうしているうちに、デーモンに音楽的影響を与え、ブラーをシンク・タンクの重要なテーマである西欧のロックとアフリカ音楽の結合へ導いたマリの音楽をどうしても聴きたくなった。
何処のCD屋さんにも置いてない作品ではあるが、ネットなら何とかなるのではないか?僕はそう思い早速調べることにした。
心に暗雲が立ち込めたが、何もタワーレコードだけが、CDを取り扱っているわけでもないと気持ちを持ち直し、Yahooのレビューを見てみると、そこからも購入できるようになっていて、HMVに在庫があり、僕はマリ・ミュージック手に入れることができたというわけである。 土曜日のお昼、宅急便でCDが送られてきた。わくわくしながら早速、ミニ・コンポに入れ、聴いてみると、想像とは違った感じだった。デーモンがミュージシャンの一員に徹してプレイしているということだから、彼の色があまり出ていないのは予想していたが、それほどアフリカを意識させる音でもなかった。 ある方向性を持たせた作品というより、マリのミュージシャンとのセッションの記録といった感じで、西欧っぽい音もあれば、路上での弾き語りをそのまま録音しただけのものもありと悪くいえば散漫、よくいえば幅広い音楽性をもった楽曲集という印象を受けた。デーモンはほとんど全曲を作っているが、完全のマリミュージシャンのうちのひとりといった感じで、彼の姿はあまり見えない。ただ、ブラーっぽい曲も含まれているので、かろうじて彼の参加がわかるといった感じだ。 ‘首都バコマ・シティ’‘テネシー・ホテル’‘午前4時、トゥーマニの家で’‘国立芸術学院’‘ケラ村’‘グリオ村’‘川の上のコ・コン・コ・サタ・ドゥンビア’等のセッションした場所をそのまま曲名にしているところからも、リラックスした雰囲気が伝わる。もちろんアフリカ独自の民族楽器の音色を愉しむこともできる。 一曲、一曲じっくり聴くというより、気楽に流し聴くのに適したアルバムで、休日の午後、ちょっと音楽でもほしい時にいいかもしれない。(2005.5.29) |