日暮れ

 日が短くなった。休憩をとろうと5時過ぎに会社の建物を出て、飲み物でも買いに行くと外はもう暗くなっている。車のテールランプの赤色や信号機の青色、コンビニエンスストアの窓からもれて歩道を仄かに照らしている蛍光灯の光りだとかがやけに心に入ってくる。そういったものは、ちょっとは心を浮き上がらせるけど、時にはいたたまれない気持ちになっりする。たぶん、外の暗さと寒さのせいだろう。

 今の時期は1年でも一番忙しい時期で、週始めは遅くまでの仕事になってしまうが、週末はそれほどでもなく、特に金曜日は暇で、上司が3時過ぎに本社に会議のため出かけてしまったため、社員の人と30分近くも話し込んでしまった。今の会社で社員になったり、パートになったりを繰り返している面白い人で、始めはパートとして入社、その後社員にならないかと誘われて正社員になったが、周囲との人間関係で精神的にまいってしまい退職を願い出るが、会社から留意され、正社員はいやだがパートに戻してくれるのならという条件で再びパートとして働き始める。

 しかし、彼のいた部署は仕事量が安定していないため、午前中の勤務だけになってしまったりだとか、酷いときには出勤しても仕事がないからと1時間で帰らされたりだとかで、収入が暮していけないくらい少なくなってしまい、今度は転職を決意して、数社を受けほとんど決まりかけていたところに、今の上司から今度はうちの部署でやってみないかと声がかかり、全く始めての仕事よりはと再び正社員に戻ることになったそうだ。

 だけど、部署は変わっても、会社が変わったわけではなく、無給の日曜出勤だとか、残業代のカット等のサービス残業にまた怒りが起こり、そのことについて僕に愚痴をこぼしたというわけだ。「こんな理不尽なことが堂々と行なわれているのに、何でみんな何もいわないのだろう」という彼の疑問はもっともだけど、その答えもわかっている。「みんな自分のことが一番大切」だからだ。そういう彼も文句を言いながら、日曜日に無給の出勤をしたり、夜遅くまでサービス残業をしていたりする。

 仕事が早く終わり、しとしと雨が降る暗くなって道を、傘をささないで家に向かって歩いているとき、自分はパートでよかったなとしみじみと思った。少なくても僕は彼のように会社に首根っこまで押さえられた奴隷ではない。やりたいことがまだまだあるのに、仕事が忙しいからと自分に言い訳して、自分の心の声を聞かないようにはなりたくない。人生これから面白くなるのに、正社員などになって大きな制限を受けるのはまっぴらだ。まだまだ、人生の日暮れには早すぎる。

 日が短くなると、どうも気持ちが沈んで退嬰的になる。冬期うつ病という病気があるようだけど、僕もそんな気があるように思う。だけど、日はいつまでも短いわけではない。季節が巡ればまた徐々に延びて来る。冬眠していた心は死んでいなければ、また活動を始める。大切なのは、心が生きていること…

 家に帰りTVを見ていたら、AppleのCMでU2の曲が使われていた。僕の知らない曲だった。これは!と思い、ネットで調べてみると、11月17日にU2の新譜「How To Dismantle An Atomic Bomb」が発売になっていた。そして、久しぶりに気持ちよく晴れた土曜日、U2の4年振りのニューアルバムを買いに行った。

秋の夜長にはいい音楽が必要だ。(2004.11.21)




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