明るいうちに

 GWの反動のため、今週はあまり仕事がなく、早い時刻に帰れる日が多くありました。早いといっても、だいたい夕方の6時くらいなのですが、陽が長くなってきているため、外に出るとまだ明るく、妙に浮かれた気分になり、開放感を強く感じました。これが同じ6時でも2月頃だと、もう辺りは真っ暗で、僕の気持ちも辺りの暗さに閉ざされたようになり、あまりうきうきとした気持ちにはなりません。

 前に勤めていた会社は1〜3月までの期間が忙しく、毎晩遅くまで仕事をしていたため、帰るのはいつも夜がかなりふけてからでした。また、会社が遠かったものですから、朝、家を出るのも早く、この3ヶ月間は平日にはあまり太陽を見ることができず、4月になって一気に仕事が暇になり、またその頃には陽も長くなっていて、まだ明るいうちに帰れると、長い間隔離されていた施設から解放されたような錯覚さえ覚えました。人の気持ちをここまで左右する陽の存在というのは大きいと思います。

 気分が沈んでいる時などに、朝陽を浴びながら散歩するといいと聞いたことがありますが、確かにその通りだと実感します。会社を辞めて、次の仕事も決まらず、気分的に沈んでいる時に朝の散歩に出ると、よい気分転換になり気持ちもやや前向きになったりしました。

 それと同じように、仕事が終わった後、夕陽をうけながら帰るというのも精神にいい影響を与えるのではないでしょうか?仕事が終わり、会社の閉ざされた空間から解放されて外に一歩出たとき、まだ陽が残っていると、仕事の疲れもにわかに抜けて行くように感じられたりして、ちょっと本屋によってみようかとか、CDを見に行こうかとか、週末などは足を延ばして映画館にでも入ってみようかという気になったりします。

 今の仕事はこれから夏にかけては比較的暇なようで、早く帰れる日が多くなりそうです。当然、収入はその分少なくなってしまいますが、あの夕方の開放感を感じられる日が増えるというのは、それを補っても余りあるくらいに貴重なことのように思えます。

 明るいうちに帰る…、単純だけど難しいことなのかもしれません。仕事によっては、1年中、陽のあるうちには帰れないという人もいるかと思います。ただ、それが当たり前になってしまっているのが怖いのです。経済を最優先としている結果でしょうけど、その「経済最優先」が当たり前になっているのが怖いのです。そうして僕らは徐々に人間性を失っていくように思えます。こんなことすすめてはいけないのかもしれませんが、たまには体の具合が悪くなったことにして、早退するなんていうのも人間性の回復には必要かもしれません。
 もういい加減、物質側に大きく傾いた「物質と精神のバランス」を考え直して、精神の方に重りを乗せていかないと、ある意味でますます貧しくなってしまうのではないでしょうか?

 朝の散歩と同じくらい夕方のそぞろ歩きも楽しいものです。いろいろな発見もできたりします。閉ざされていた心が陽によって開かれるからなのかもしれません。仕事は4時くらいで終わり、あとはみんな家路についたり、夕暮れの街をぶらぶらなんてなったら、経済的には貧しくなるでしょうけど、暮していて愉しい国になるような気がするのですけどね…(2004.5.15)




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