初詣に行ったけど…

 どうも休みに入ってから、体調がよくない。有馬記念の前日に37.5度の熱が出て、さらにバイト先の通勤費まで注ぎ込んだ馬券が外れたショックから寝込んで、それが尾を引いたのかその後もあまり具合はよくなくて、家でゴロゴロしていた。今年に限らず、何故か正月休みは体調が悪いことが多い。1年の疲れが出るのだろうか?

 僕はあまり家の中にいるのが好きでないので、大晦日に歩いて30分くらいの距離にあるH八幡宮まで散歩に行ってきた。参道には無造作に屋台がただ単なる木の大きな箱としていくつも置いてあった。人もまばらで、空が曇っていることもあってか寒々とした風景だった。

 大晦日というか年末の街の雰囲気が僕は何故か好きだ。街にはもう「これで今年も終わりだ。何をやっても仕方ない」というような諦めに似た独特の寂しさが漂っているような気がする。その独特の寂しさに僕は何ともいえない安らぎを感じてしまう。だけど、これが1日たち、元旦になると急に街は前向きな明るい雰囲気になり、居心地が悪くなる。だけど、街の風景がわずか1日で劇的に変化するはずもないから、これはただ単に僕の気持ちの持ちようなのかもしれない。

 元旦、あまりに暇だったので、昨日行ったH八幡宮に初詣に行こうと思い、外に出た。それに正月はいい映画を深夜に放映する場合があるので、道すがらコンビニに寄ってビデオテープを買っておこうと思った。どちらかというと、ビデオテープを買うほうが主で、初詣はそのついでにといった感じだった。

 気持ちの持ちようかもしれないけど、やっぱり街は昨日に比べて前向きになっている気がする。H八幡宮につながる桜並木の道を歩いていると、上下トレーニングウェアを着てウォーキングしている女性だとか、サッカーに興じる親子だとか、店に新年用の飾りつけをしているおじさんだとかみんな動き出していた。

 H八幡宮が近づくと初詣に行く人、またはそれから帰る人がぞろぞろと歩いていた。家族連れの人が多くてみんな明るい顔をして楽しそうだった。父親に肩車された子供の手に破魔矢が握られていたりして、変な話しだけど、お正月なんだなと思った。

 参道はさらに人でごったがえしていた。昨日までただの木の箱だった屋台も、今日はたこ焼きだとかやきそばとかのいい匂いをさせている。だけど、僕は何となくお参りする気がなくなってしまい、参道には入らないでそのわきの道にそれた。人の多さに嫌気が差してしまったのだ。

 帰りはちょっと回り道をした。何となく今年はいろいろなところを旅してみたいなと思った。今やっているバイトも夏はかなり暇になるようだし、2週間くらい休んで北海道をバイクにテントを積んで放浪しようかななどと考えた。去年は山陰に1週間くらい行っただけで、旅をしたいという気持ちがあまり起こらなかった。よく、考えてみると昨年の僕は今までにないくらい、現実主義になっていたのかもしれない。

 会社員の頃は収入が安定していたため、生活に困るということがなく、その先にある非日常的なことばかり考えていたように思う。しかし、約半年近くも無職として過ごした昨年は、日々の生活に追われ、日常のことが頭の大半を占めていたのだろう。無謀な夢も見なくなった代わりに、旅行というちょっとした非日常的なことを考える余裕も失っていたように思う。

 今年は日常と非日常のバランスのとれた生活ができたらいいななんて思った。そんなことを考えていたら、知らない間に家の近くまできていた。ビデオテープを買うことをすっかり忘れていた。初詣に行ったのにお参りもせず、ビデオテープも買い忘れている。一体なんのために僕は外出したのだろうか?軽い自己嫌悪に襲われた。仕方ない、また近くのコンビニまで行くことにした。歩いていると不思議と内省的になってしまう。(2004.1.2)




皆さんのご意見・ご感想をお待ちしています。joshua@xvb.biglobe.ne.jp

TOP INDEX BACK NEXT