サイクリング三昧の日々


ここ4日間、連続で多摩川のサイクリングコースに自転車に乗って出掛けた。

 木曜日、久しぶりに夏らしい天気になり、夕方に雷雨があるという予報も出ていたけど、ちょっとは夏を感じてみたくなり、午後から太宰治の短編を収録した文庫本と麦茶をペットボトルに詰め出かけた。平日なので人もあまりいなくてのびのびとした気分になった。この日は約10Kmあるサイクリングコースを半分くらい走って、河原のベンチに座り、持ってきた太宰の短編集を少し読んだが、あまりにも風と陽が気持ちいいものだから、そこに横になって体を伸ばした。夕方に近くなった頃、やや雲行きが怪しくなり、雨がポツポツと降ってきたので帰路についた。

 金曜日、11時くらいに職安に行った。お昼が近くなるにつれて人も少なくなり、落ち着いて検索機を使っていた。しばらくすると空いていた横の席に若い女性が座った。職安の中は冷房が効いていて涼しいけど、外は暑いようで額の汗をハンカチで拭いていた。その若い女性の汗の匂いがほんのりとしてきて、落ち着かない気分になってしまった。

 集中力をかいたまま検索機を使っていたが、斜め左後ろの席でちょっともめているような声がしたので振り返って見ると、60代半ばくらいの女性が職安の女性係員に検索機の説明を受けているようだったが、今1つよくわからないらしかった。今は職安で仕事を探すのもパソコンを使うので今までそういったものに馴染みのない高齢者には辛いものがあるかもしれない。

 もっと親切に教えてあげればいいのに、その女性係員は通り一遍の説明だけですませてしまったようであった。その女性は使い方がよくわからず、隣の女性にいろいろと訊いていた。洗い場の仕事を探しているようで、さかんにそのことを訊いていた。そうすると先程の職安の係員が来て、静かにするように注意をした。その60代の女性はそれからちょっとして席を立って帰って行った。果たして仕事を見つけることができたのだろうかと気になった。

 僕はやり切れない気持ちになってしまった。いろいろな感情が心に現われて整理がつかなくなった。職安の係員の不親切さ、ちょっとしたやさしさのなさへの怒りか、60代半ばで懸命に洗い場の仕事を探している女性に心を打たれたのか…よくわからないが、やり切れず、自分でもうまく処理できない感情に包まれてしまった。

 部屋の戻り、昼食を取った後も心の中は悶々としていて、天気がよかったこともあり、また多摩川にサイクリングに行ってしまった。この日はペットボトルに入れた麦茶だけを持ち、約10Kmあるサイクリングコースを往復した。

 土曜日、この日も天気がよく、またサイクリングコースに行ってしまった。というのも来週は曇りがちの天気になるようだし、今年の夏もそろそろ終わりだし、思いっきり夏の匂いを嗅ぎたくなった。つげ義春の‘貧困旅行記’を持ち、またペットボトルに麦茶を入れて部屋を出た。

 終点まで走り、あまりの暑さに麦茶は持ってきたのだけど、冷たいジュースが飲みたくなり、自動販売機で買い、堤防の上に座って飲んだ。乾き切ったのどに冷たいジュース、クセになりそうなほどおいしく感じた。また、のどが乾き切っているから、これほどおいしく感じるのだろう、乾いていなければ同じジュースでもこうはおいしく感じないだろうななどと考えた。

 帰りの木陰のベンチに座り、持ってきた‘貧困旅行記’を読んだ。こうしたサイクリングもちょっとした旅ともいえるのでいい選択だったかもしれない。

 そして今日、ほんとは部屋でゆっくりしていようと思っていたけど、どうも部屋にいるとよくない考えが浮かんできて、暗い気分に覆われてしまいそうなので、足がちょっと筋肉痛だけど、また多摩川のサイクリングコースに行ってしまった。今日が一番すっきりと晴れているような気がした。休日のため、人が多く、サッカーや野球のグランドがあるところでは軒並み試合が行なわれていて、車の出入りも激しく、砂煙がもうもうと立っているところもあった。

 終点までは走らず、適当なベンチでゆっくりしようと思ったが、先客がいてなかなか空いているところがなかった。それでもどうにか見つけて、後は横になったり、持ってきた本を読んだりを繰り返した。太陽の下で風に吹かれながらゴロゴロするのは気持ちいい。こういう気分がずっと続けばいいのにと思った。(2003.8.25)




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