リストラされた友人への手紙


 今度の旅に出る前にあなたがリストラされたことをメールで知りました。かなり、落ち込んでいるとのことで心配です。旅の最中、時折あなたのことが頭に浮かびました。
梅雨の真っ只中でしたけど、幸にして半日ほど強く降っただけで、雨にはほとんど降られませんでした。

 梅雨の中休みで薄日が差して、そよ風が気持ちいい中、平日でほとんど観光客のいない天橋立を歩きました。両脇の松林に囲まれた道はほんとに爽やかでした。湿った地面の感触が足の裏に心地よく伝わって、一歩ごとに気持ちがほぐれていきました。

 時折、海からのやさしい風が松林の中を通り抜け、熱くなった体を冷やしてくれます。陽はほとんど松の枝や葉に遮られていますが、所々それらを掻い潜ったものが地面に明るい斑点を落していました。

 帰りは同じ道を歩いても…と思い、松林を抜けて砂浜に出ました。こっちの方はいくら薄曇といっても6月の陽は結構強く降り注ぎ、眩しく感じられました。風も以外と強い向かい風で潮の香りを運んでいます。砂浜ですから、足場も悪く疲れます。だけど、目の前には先ほどまではなかった広い空間が無限大に広がっていて、何ともいえない開放感を感じました。

 途中に休憩用のベンチがあったのでそこに腰を下ろし、目の前に広がる海とその向こうに連なる山々を見ていました。ほんとに風と陽に包まれているのは気持ちよくて、ずっとこの場所にいたいと思ってしまいました。

 そういえばあなたも海を見るのが好きでしたね。そんなことを思い出しました。あなたがもしこの場所にいたら、多少は気持ちも和らぐのではないかなと思いました。もっともあなたが好きな海は明るい陽に包まれた海ではなくて、波の音だけが聞えているような静かな夜の海でしたね。

 旅が終わって、僕もいよいよ次に向けて歩き出そうと思っています。どうなるのか…自分でもよくわかりません。よくわかりませんが、会社を離れて経験したり感じたことが自分のちょっとした財産になったような気もします。

 また、メールで別の友人が結婚したことも知りました。そのことがさらにあなたを惨めな思いにしているのかもしれません。みんなが幸せそうにちゃんと暮らしているのに、自分は…と思ってしまうでしょう。

 だけど、リストラされるのも結婚するものそんなに大した違いがないような気もするのです。結婚するときはその暗い面などを思う人はあまりいないでしょうし、リストラされてその明るい面を考える人も少ないでしょう。

 結婚して何か失うこともあれば、リストラされて何かを得ることもあると僕は思うのです。要は本人次第なのです。何かを一方的に得たり、失ったりするということはないと思います。何かを得ればその影で何かを失い、何かを失えば知らない間に何かを得ているものです。結婚しようが、リストラされようが幸せになればいいんです。

 今回の旅で僕はいろいろなものを見たり感じたりしました。そこには当然失ったものもあるでしょう。だけど、そんなことはどうでもいいような気がします。僕は未来やまして過去のために生きているわけではありません。今を少しづつ生きています。

 あなたも今を強く感じでほしいと思います。リストラされたのは過去のこと、将来の不安は未来のことです。そんなものに縛られて生きるのは辛いことです。リストラされようが、あなたはあなたなのです。そんなことで人間の価値が決まるわけもないのです。くだらない世間の価値観なんて、トイレにでも流してしまえです。

 100%前向きになる必要もありません。そんなの暑苦しいだけです。51%の前向きでいいと思います。そう…少しづつゆっくりと生きていけばいいんです。

 西日本を旅してるとTVでもラジオでも阪神が中心なので、うれしいです。
今度、会ったとき野球の話でもしましょう。巨人はもうダメですね(笑)
それに比べて阪神の強さ!今年はいい年になりそうです。(2003.6.26)




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