台風と旅


 東京は朝からいい天気だけど、とても強い風が吹いている。たぶん、日本海に抜けた台風6号の影響だろう。そのせいで、強風だけでなく猛暑になってしまい、昨晩なんてほんとに寝苦しかった。これからこういう寝苦しい日が増えるのかと思うと気が重い。夏の東京って人間の暮らす場所じゃないような気がする。

 それに夏になると、日本列島に上陸する台風も増えるんだろうな…。でも、こっちのほうはそんなにイヤでもない。‘台風、関東地方に上陸か!’とか‘東京直撃!’なんていう予報が出るとワクワクした気分になってしまう。そしてTVの天気予報やニュースにかぶりついて、いつまでもついつい見てしまう。台風が来るとワクワクしてしまう習性は子供の時からで、小学生の頃、今考えると無謀としかいえないけど、増水した近くの川を見に行こうとしたことがあった。もっともこのときは家を出て10mで傘が壊れてしまい、家に逆戻りになってしまった。

青空は失われ黒雲が空を覆って辺りは薄暗くなって、
雲が次から次へと流れ、
風がビュー、ビュー吹いて、
木々の枝や葉っぱがそれを必死に耐えて、
窓がガタガタ鳴って、
雨が屋根や窓や地面を激しく叩いて、
太い雨粒の束と白い飛沫で視界はなくなり、
手におえない力に支配されている。

 そういう光景を見ると僕は何とも言えない開放感を感じてしまう。たぶん、台風が一時的であるにせよ、閉塞感に包まれた日常を壊し、非日常を見せてくれるからだと思う。完璧に思えるシステム社会の中に一時的にできる綻びから、高い青空がのぞいたような感じだ。僕は無責任に日常を壊してくれる何かを待っているのかもしれない。だから、僕は同じ理由で雪もワクワクする。雪はきれいだからさらにいいかも…。

 日常が鬱陶しくてしかたない僕を受動的にそこから離れさせてくれるのが台風や雪なら、能動的に離れる手段として旅がある。旅をすればそこはもう非日常だ。僕の旅は日常という鬱陶しい世界からの逃避のような気がする。

 そんなわけでまた旅に出たくなってしまった。明日から今まで行ったことのない山陰に行ってみようと思っている。財政状態はあまりよくないので、1週間程度になると思うけど、予定はまったくなく、鳥取砂丘くらいしか思い浮ぶ観光地もない。でも、観光地を次々と周る旅より、のんびりと街を歩いたり、田舎道をブラブラする方が楽しかったりする。温泉にでも浸かって一息つこうっと(^^)

 予定を立ててその通りに行動するのなら旅をする意味はないように思う。旅は何があるかわからないから面白い。ある程度の予定はあった方がいいかもしれないけど、それに縛られるのは旅行の面白さを半減させてしまう。偶然や不確定要素に身を任すことによって、心も柔らかく自由になるような気がする。風まかせ、足まかせ…そんな旅が一番楽しい。

 台風は日常を吹き飛ばし、旅は日常から離れさせてくれる。それにしても僕は何で日常を鬱陶しく感じるようになってしまったんだろう?

 今日は暑い日だった。こんなに暑いと何もやる気が起きない。窓辺で昼寝が一番気持ちいい。それはいつものことだけど…(^^; (2003.6.21)




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