雨の効用


 ここのところ天気がはっきりしない。梅雨入りしたんだから、当たり前といえば当たり前だけど、雨もあまり思い切り降ってないような気がする。今日は朝からまあまあ本格的な雨になっているけど、それまでは曇っていて時たま小雨が降る程度だった。

 昨日は午後から家の近くを流れているボラが大発生した川沿いを散歩した。雨は降っていなかったが、いつ降ってきてもおかしくない空模様だったので傘を持っていったら、すぐにポツリポツリときた。やっぱり、傘持って来てよかったと思い、傘を開いてしばらく歩いていると、周りを歩いている人は誰も差していない。傘をよけて空を仰ぐと、知らない間に雨は止んでしまったようだ。傘を閉じてしばらく歩いているとまたポツリポツリ… 傘を開く。気づくと止んでいる… 傘を閉じる。こんなことを5、6回も繰り返してしまった。

 …

 TVの天気予報を見ているとだいたいキャスターは雨をいやなもの、ネガティブなイメージで伝えているような気がする。もちろん、雨が好きでない人は多いと思うけど、雨がそんなに嫌いじゃない人もかなりいるんじゃないかと思う。僕もそのひとりだから…

 旅行に行って降られるのはさすがにへこんでしまうけど、日常だったら雨はなかなかいいもののような気がする。雨が降ると気持ちが落ち着くから…。

 今はそうでもなくなってしまったけど、昔は雨の中のドライブが好きだった。雨の中、ひとりで車を走らせる。向かう先は千葉のあまり人のいない海岸が多かった。海岸までいって駐車場に車を止めて、FMラジオを聴きながらシートを倒してぼんやりしていると気持ちがとても落ち着いてくる。眠くなったら車のエンジンを切り、FMラジオも止めて車に当たる雨音だけを聴いていると別世界に落ち込んでしまったような感覚になり、何ともいえない安らぎを得ることができた。

 会社で働いていた頃、仕事で疲れてしまい、休日でもずっと寝ていたいことがあった。こんな時、太陽が元気にサンサンと輝いているのに、ずっと家にいると何故か背徳的な行為をしている気分になってしまい気持ちの安定が得られない。だけど、雨だったら…。

 雨が降ってくれると、それが言い訳になって家にいても何の苦痛もなく、気持ちも落ち着く。
1日寝ていてもいいし、
映画のビデオを観ていてもいいし、
CDをずっと聴いていてもいいし、
窓辺で降る雨を見ながら本を読んでいてもいい。
だから、僕は雨がそんなに嫌いじゃない。

 会社を辞めて当面何処にも行かなければならない場所がないから散歩が日課のようになってしまった。さすがに雨がジャンジャン降っていると散歩をする気にはならないけど、雨上がりの散歩はほんとに気持ちいい。

 雨のシャワーによって都会の汚れた空気が洗われてきれいになるせいなのか、雨上りの空気はとてもおいしく感じられる。草木も大きく呼吸をしているようで、桜並木の道なんて桜の息吹でいっぱいになっている。
それに小鳥もチュンチュン鳴いて、
猫がブロック塀の合間からひょっこり顔をだしたり、みんな動き出す。
雨上りの散歩は散歩の中でも最高級品だ。

 …

 朝、雨は降っていたけど近くの神社まで散歩に行って、賽銭に9円だけ入れて帰ってきた。
今日は特にやらなくてはいけないこともないし…
FMラジオのスイッチをONにして、
ちょっと窓を開けて、
窓辺で降り続く雨を眺めながら、
誰かのエッセイ集でも読んでいようか。
本に疲れたらうたた寝… 
いや、いや、腕立て伏せとか腹筋とかしてちょっとは体を動かそうか、
好きなCDを聴きながらぼーっとしているのもいいかも…
まあ、どうでもいい…

 雨もなかなかいいかもしれない。(2003.6.17)




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