コロナ禍で浮かび上がった日本の問題点

 新型コロナの国内初めての感染者が確認されてから三年が経つ。先日、ようやくGW明けに新型コロナの感染症の分類を五類に引き下げることが決定された。これで、いわゆるコロナ禍は終了になる。ここまでを振り返って、この三年、同じことをただ繰り返していただけだったなと呆れる思いがしている。

 感染者が増えれば非常事態宣言を発令し、飲食店・娯楽施設などには休業や時短要請、ワクチン接種を呼びかけるばかりで、常に医療機関はひっ迫を続け、報道機関はただ恐怖を煽った。欧米ではすでに新型コロナに関する規制は解除され、マスクをしている人を見かけることも少なくなった。ゼロコロナ政策という実現不可能な愚策をしていた中国でさえ、それを転換するとすぐに緩和をすすめ、今では日本を追い抜いてしまった。何故、日本だけが変わることができず、いつまでもずるずるとコロナ脳を引きずり続けているのだろうか?日本人の問題解決能力の無さに絶望する思いがする。

 イギリスでは約1年前の昨年2月21日に新型コロナウイルス対策の法的規制をすべて撤廃すると発表している。この発表に対してイギリス国内の医療従事者などから懸念が表明されたが、政府は実行した。この政策転換が裏目に出て、感染者が急増し、死者も増加したりすれば政府は批判にさらされる事態も想定される。それにも関わらず政策転換を実行できた背景には、何があったのだろうか?

 イギリスがコロナ対策の撤廃を早々と決断できた背景には政治家の資質はもちろん、ウイルスの毒性に対する科学的なデータが基本になっている。もう何をやってもムダだからと「えいやー」と決断したわけではない。イギリス保健省はかなり細かく対策を次々と打ち出していた。それには科学的データが基になっていて変異株ごとに重症化率、致死率を算出していた。コロナの弱毒化が鮮明になってきたデルタ株の時点でマスクの着用の義務化を撤廃している。

 それに比べ日本ではその手の情報は厚生労働省のHPのどこを見てもなく、さらにはワクチン接種者と未接種者の10万人当たりの感染率のデータ改ざんまで行っていたという体たらくだった。このデータ改ざんは名古屋大学の小島教授が海外のデータ(イギリスやスウェーデン)と比較して、日本のワクチンが「効き過ぎている」ことに疑問をもち、知り合いの国会議員を通じて厚労省へ質問し、発覚したものである。原因は接種したが接種日を忘れてしまった人たちを未接種のカテゴリーに入れてしまったためだった。

 つまり海外ではニュートラルなデータが公表されているのに、日本ではバイアスのかかった「誰かに都合のいいデータ」しか出てこない。このため起きている事象を正確に判断し、適切な処方箋を出すことが日本ではできなくなっている。その原因は自己の利益や保身を第一としている人ばかりである。政治家は支持率や保身、官僚は天下り先への配慮、テレビは視聴率、そして製薬会社や医療従事者は利益や補助金である。

 正確なデータのないため、或いはバイアスをかけているため、的確な政策判断ができなくなっている。したがって「誰かに都合のいい」政策ばかりで、実態とは大きく乖離してしまっている。また、政府はコロナ政策を緩和した場合、それによって起きる批判を恐れ、動こうとしない。とにかく責任を取りたくないのである。これによってたいして意味ない対策をいつまでも延々と続けるということになっている。

 厚生労働省の役人は役所を退所した後の天下り先への配慮のため、製薬会社に都合の悪いことはできるだけ隠そうとしている。これはテレビ局も同じで、広告収入してお得意さんである製薬会社へ配慮して、真実を報道しようとはしない。テレビでワクチン接種後の死亡者や後遺症を詳細に報道しているのを観たことがない。一部、地方局の取り上げているだけである。このため、テレビでしか情報を得ていない人はワクチンに何の問題もないと思い込み、ブースター接種を繰り返している。

 また報道機関、テレビや新聞はただコロナを煽ることに終始した。真偽のわからない情報を「○○の可能性があります」という文言で垂れ流した。「今のニューヨークは二週間後の東京の姿です」と発言したウイルス専門家ではない人間を専門家と称し出演させ続けた。「オースオラリアですれ違っただけで感染」などという海外ワイドショウの真偽不明な情報を検証もせず放送し、結局はそのまま放置になった。このようなことはいくらでもある。

 しかし、皮肉なことにコロナを煽り、テレビにくぎ付けにする戦略は当初は成功したが、今では完全に裏目にでている。さすがに視聴者も過剰な煽りに疑問を感じ始めた。五〜六人の専門家と称する人たちを繰り返して出演させ、マスクをしろ、ワクチンを打てと同じ事ばかり繰り返して発言している姿にもうんざりしてきた。感染者が増えてきたら医療ひっ迫と煽り、何故、現場がひっ迫しているのかその原因を追究することはなかった。

 視聴者は徐々に他の媒体に流れ始めた。NETFLIXやアマゾンプライムビデオなどである。そこで視聴できる映画やドラマの方がはるかに良質で面白いからである。YouTubeでは様々な動画が流れているし、テレビのマスクをした表情のよくわからない出演者などはもう見たくないのである。信用できない報道姿勢と面白くないコンテンツに愛想を尽かせてしまったのである。

 ある政治家は感染者が増えてくるとその原因として緩んでいる、弛んでいるという発言を繰り返していた。某東京都知事や某経済再掲担当大臣など重要なポストについている人がこのようなことを発言した。弛んでいてもいなくて、感染するときは感染してしまうものだ。科学よりもわけのわからない精神論が未だに幅を利かせていることに呆れる。この国の精神構造は戦前とほとんど変わっていないように思う。

 空気ということに関すると国民自体にも大きな問題がある。新型コロナの感染が広がり、一回目の緊急事態宣言が発出した後、自粛警察というのが現れた。緊急事態宣言により飲食店などは時短営業や休業を求められた。だた、この要請に強制力はなく、あくまでも店舗側の自主的な判断に任されるものだった。要請に従えば協力金がもらえるが、従わなければ協力金はもらえないというだけである。したがって協力金を貰うより、営業した方が得だと判断し要請に従わないという決断した店舗が現れた。これに対して自粛しない店に対して嫌がらせや破壊行為をする人が出た。

 また、これは一般市民だけでなく、高速道路のサービルエリアに立って他県ナンバーの車に県境を越えないようにいう知事まで現れたくらいである。これにより他県ナンバーの車を傷つける人間まで出た。また、医療従事者やコロナに感染した人に対して嫌がらせが続出し、マスクをしていない人を怒鳴ったりするマスク警察と呼ばれる人たちも出現した。

 この三年間、全く変わらなかったのは情報のアップデートが全くできていない為である。ウイルスの変異により、弱毒化が進む中、海外ではそれに合わせて対策の緩和が行われてきたが日本では最近までほとんど進まなかった。それは前にも書いたが科学的なデータがニュートラルに分析されていないこと、そして、政治家、官僚、メディア、製薬会社、医療従事者など責任のある人たちが自分たちの保身または利益を最優先にしていることによる。

 これは、第二次世界大戦の頃と比べて、日本が全く進歩していないことを示している。それらを許しているのは思考停止状態の国民の責任である。しかし、どうすれば科学的な事実に基づいた合理的な意思決定ができるのか、その処方箋がわからない。結局はいつまでも「空気」に支配され続けるということになるのだろうか?82023.2.5)


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