新型コロナウィルス狂想曲

 会社に着くと年配のパートのおじさんがティッシュにアルコールを含ませ、エレベーターのボタンやドアノブなどを拭いていた。コロナ対策として上司から、毎朝、みんなの触るところを消毒するように指示されたという。そして、僕の働いているフロアーは業者さんとの接触の多いことから、マスクの着用が義務付けられた。さらに全社的に時差出勤ということで、希望者は10時から出社することになった。世間的には小・中・高校の全国一斉休校、大規模なイベントの自粛、野球やサッカー、競馬などの無観客試合など大きな影響が出ている。

 新型ウィルスということで不安も大きいが、実際にはそれほど毒性の強いものではないようだ。感染者の8割は症状が出ないか軽症で致死率は1%程度、以前に流行したSARSやMARSに比べれば致命的なものではなく、インフルエンザが0.1%未満だから、だいたいその10倍ということになる。(ちなみにSARSの致死率は9.6%)ただ、高齢者や糖尿病や喘息などの基礎疾患のある人は重症化しやすいので注意しなくてはならない。

 新型コロナの影響で現在は何処に行ってもマスクは売り切れ、また、中国から輸入ができなくなるというデマによってトイレットペーパーやティッシュ、さらにはキッチンペーパーまでが品薄状態となっていて、僕も昨日になってようやくトイレットペーパーを近所のドラッグストアで買うことができた。家にはあと1ロールしか残っていなかったので、ギリギリの状態だったのである。深刻なのは会社の方で、トイレットペーパーがほとんどなくなり、注文しても入荷は未定といわれているようで、厳しい管理体制が引かれている。

 マスクの取り合いでケンカになったり、電車内で咳をしたら怒鳴られたなどということも起きて、人心が荒み始めている。感染者は犯罪者のような扱いで、ダイヤモンドプリンスの乗船者の中には、近所の人から外に出ないでくれといわれた人もいる。また、コロナに感染したからと上司から退職を求められたケースもあった。

 ただ、日本は諸外国と比べて、それほど酷い状況ではないように思う。感染者数は検査数の差があるので、実態を表してはいないかもしれないが、死者数によってある程度深刻度を計ることはできそうだ。死者は3月19日現在多い順にイタリア4032人、中国3245人、イラン1433人、スペイン1002人、フランス450人、米国205人となっており、日本は36人(クルーズ船は除く)である。

 マスコミは連日、感染者数を速報で発表し、トップニュースは何処もコロナ関連で埋め尽くされている。しかし、実際は一日の感染者数は50人前後でインフルエンザの17万人とはけた違いの少なさだ。死者数も毎年3000人以上が亡くなっているインフルエンザに対して36人、インフルエンザが猛威をふるっているというニュースはよく見るが、コロナよりはるかに多くの死者を出しているにもかかわらず、全くといっていいほど騒ぎにはなっていない。どう考えても、コロナウィルスは騒ぎ過ぎである。僕にはどうしてこんなに騒いでいるのか理解できないでいた。

 しかし、単純に死者数だけでインフルエンザと新型コロナウィルスを比較して、‘騒ぎ過ぎ’としてしまうことに警鐘を鳴らす専門家もいる。インフルエンザの死亡原因の多くはインフルエンザ感染後に起こる細菌性肺炎や脳梗塞などであるのに対して、新型コロナウィルスはウィルスそのものが肺炎を引き起こし、死亡する。重症のウィルス性の肺炎というのは、治療が困難で救命できない場合も出てくるという。したがって、ウィルスの怖さという点では、インフルエンザよりも脅威であることは間違いない。

 さらに、新型であるため、人々に免疫がなく誰でも感染してしまう恐れがあり、まだ、治療薬もない。さらにこのウィルスは、インフルエンザウィルスよりも長く存在することができ、症状のない人からも感染することがある。つまり、僕が「大したことはない。騒ぎすぎだ」と思っていたのは、日本では感染がそれほど増えていないからだった。もし、インフルエンザ並みに感染が拡大したら、かなり悲惨な状況になるだろう。

 テレビでの「感染が広がっています」とか「今日は、○○人感染者が出ました」とかは、確かに大げさであり、騒ぎ過ぎだとは思う。しかし、ウィルスそのものの危険性を思うと、感染を抑える努力はしなくてはならない。クラスターの発生場所が報道されているので、しばらくの間はできるだけそういった所を避けた方がいい。

 土曜日、通常は休みなのだけど、何故か出勤する人が少ないからと会社へ行った。電車はガラガラで最寄りの駅から座れた。昼休み外へ出ると、やはり人出は少ないが、お子さん連れの家族なども見受けられ、ほのぼのとした光景があった。仕事が終わり、会社近くのモールへ買い物に行くと、多くの人たちがいてコロナウィルスは終息したのではないかと錯覚するほどだったが、帰りの電車、車内はガラガラだった。(2020.3.22)


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