祝日を休めない会社

 現在、勤めている会社の休日は、日曜日だけである。ただ、正社員は隔週の週休2日制ということになっているので、隔週毎に何処か1日を休むことが出来るらしい。しかし、パートさんは僕を含め土曜日を休みにしている人が多いので、連続して2日休むことは難しいようである。

 GW期間中も、世間では5連休だとか、金曜日を休めば9連休などとマスコミで騒がれていても、うちの会社には全く関係なく、休めるのは日曜日だけという人がほとんどである。以前は、祝日は休みだったそうだが、いつしか出勤日になってしまったという。僕は働き始めた当初、祝日は休んでいて、社員さんから「Hさんが、休んだから大変だったんだよ」などと嫌味を言われたこともあった。

 そういう圧力もあってか、僕もいつの間にか祝日に出勤するのが当たり前となっていた。そして、それが続くと、違和感を覚えることもなく、「祝日は電車も空いていていいな」などと思うこともあり、「勤労感謝の日なのに、遅くまで残業かよ」などという諧謔を聞いて、笑っていることもあった。

 しかし、最近になり、祝日に出勤することに対して、疑問を持つようになった。祝日に働くということは、社会の動きと切り離されることのように思えてきたのである。家族のいる人は会社を辞めない限り、GWに家族旅行にいくことはできないし、また、友人たちが休みのとき、一人働くということになるから、友達付き合いも悪くなる。

 長年、このような環境にいると、いつしかそれが当たり前となり、返って祝日に出勤していることに優越感を覚えたりして、社会の一員から会社の歯車と変化する。井の中の蛙のように、狭い範囲でしか物事を見られなくなり、また、社会への関心を失っていく。社会より会社になってしまうのである。

 祝日だけならまだましかもしれない。二交代、三交代制で働いている人は、曜日や昼夜の区別もなくなる。僕の弟は年中無休の24時間営業の店舗で働いているため、あるのは会社のカレンダーだけであり、昼夜や曜日の配列もすべて消え去っている。

 大晦日、実家に帰ったら、弟は夜勤だという。夜の八時から仕事なので、六時半くらいには家を出ないといけないから、夕食も早めになる。5時くらいに頼んでいたお寿司が届き、それを食べ、妻が作ってもっていったペルー料理のアヒ・デ・ガジーナを少し食べ、仕事に向かった。大晦日も、元旦も、関係ない。夜の職場で向かえる新年とはどのようなものなのだろう?

 以前、いっしょに働いていた男性は、4勤2休の工場に転職した。そちらの方の給料がよかったからだ。4日昼勤で2日休み、その後4日夜勤で2日休みというサイクルを繰り返す。この勤務体制に組み込まれてしまうと、曜日そのものが消失する。祝日どころか日曜日さえも消え去り、人間はまるで一定のサイクルで働き続ける機械のようになる。

 僕は、現在の会社の除いたところでは、幸いなことに週休2日制で祝日も休みだった。それでも、日曜日は、外出を控え、月曜日に備えたりしていて、会社中心の生活スタイルになっていた。余暇に充てることのできる時間が減れば、その傾向はさらに強くなると思う。

 このような勤務体系は、明らかに非人間的である。このような主張をすると、現代社会はそうしないと回らないのだという声も聞こえてくる。しかし、ヨーロッパでは日曜日、飲食店はもとより、スーパー、デパート、ブティックなどほとんどのお店が休みになる。日本人からみると、困らないのだろうかと心配になるが、それが当たり前になっているので不便には感じないそうだ。ヨーロッパでは、余暇を充実させるために仕事をするという意識だが、日本は逆で仕事のための余暇なのである。

 二交代、三交代制ともなれば、夜勤はつきものになり、さらに非人間的な生活になる。家族、友達などの付き合いに大きな影響がでるし、健康面はさらに深刻である。家族との会話が減り、友達付き合いは無くなり、常に健康の不安を抱え、体調の悪さに悩まされる。

 社会と切り離され、さらに体調の悪化により、人々はますます家と会社を往復するだけの円環に閉じ込められていく。もうそろそろ、会社中心の社会から、生活中心の社会へ転換していかなくてはならない。非常に難しいことではあるが、まずは自分自身の意識を変えることから始めて行きたい。(2018.2.17)


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