路線バス

 引っ越したことにより、路線バスに乗る機会が増えた。以前も、お米など重い荷物のあるとき、路線バスを使っていたが、引っ越し先は駅まで徒歩35分くらいかかるので、通勤の行き帰りはもとより、休日に出かけるときも路線バスを使っている。

 現在、使っている路線バスは神奈川中央交通で料金後払いの後乗り前降りである。乗る距離によって料金の変るためだ。以前、使っていた横浜市営バスは、距離に関係なく、料金は一律だったので、前乗り後ろ降りだった。前乗りと後乗りの違いはあるが、年齢によって乗客の座る位置が、だいたい決まってくるのは同じである。年をとった人は前方に座り、若い人は後方という具合だ。

 後乗りといっても、ドアはバスの車体の真ん中にあるから、足腰の弱いお年寄りが、段差と距離のある後方まで行くのは大変だし、また、後方の席に座ってしまうと、降りるのも一苦労ということになってしまう。

 バスは前方の席に座った方が、乗り降りに関しては断然楽だから、若い人でも、前の方に座る人は多く、通常は前の席から埋まっていく。前の席が埋まってしまった場合に、年をとった人が後ろに流れていくということは、以前乗っていた路線でもあった。しかし、現在使っている路線は、初めから後ろの方に、座ろうとするお年寄りが、意外と多いのである。

 通勤時には、その理由がよくわからなかった。年を召しているのだから、前の方の席に座った方が降りる時楽なのに…、と思いながら後方に向かうお年寄りをみていた。だが、休日に何回も乗っているうちに、その理由が何となくわかってきた。

 それは、さらなるお年寄りがいるからだった。お年寄りといっても、みんな一律ではない。足腰の達者な人もいれば、歩くのがやっとという人もいる。杖をついてやっと歩いているようなお年寄りが、路線バスには乗ってくるのである。

 現在、住んでいるところは、以前に住んでいた所と比べ、不便なところである。端的にいってしまえば、田舎なのだ。家の周りには、畑も多く、住宅も築年数の経ったものが多く散見される。住んでいる人たちも、高齢の人が多く、駅や病院、スーパーなどに行くには、バスは欠かせない乗り物なのである。スーパーでは、無料の巡回バスを出しているところもある。

 比較的、足腰の確かなお年寄りたちは、自分たちよりさらに高齢で、足腰の弱いお年寄りに気を使って、後ろの席に座るようにしているように思える。杖をついているようなお年寄りは、前の方に座らなければ、降りるときに一苦労ということになってしまうし、そもそも段差を越えて後ろに行くことはできない。

 路線バスに乗る人は、ほとんど地元の人ばかりだ。電車ではまずありえないが、隣近所の人とばったり会うなどということもある。そのような環境では、自然と行動に規律のようなものがうまれてくるのかもしれないと思った。(2016.12.4)


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