13.リフォーム完成 当初、6月中旬にはリフォームは終わる予定だった。業者も余裕ですといっていた。したがって、6月下旬に引っ越しを設定した。家賃と家のローンとの二重払いの期間をできるだけ短くしたかったのである。家賃は日割りにしてくれるので、7月に入ったからといって1カ月分まるまる請求されることはないが、気分的に6月中にかたをつけたかった。 しかし、6月に入ってから、雲行きが怪しくなってきた。何でもクロス屋さんを当初予定していたところから変えたので、若干、遅れるが、予定されている引っ越し日には余裕で間にあうといわれた。その言葉を信じ、引っ越し業者を頼んだ。しかし、引っ越し日の1週間前になっても、リフォーム業者から完成を知らせる連絡はなかった。 心配になり、こちらから電話をすると、引き渡しは今週を予定しているといわれ、結局、こちらの仕事の都合もあり、引っ越し前日の土曜日ということになった。1週間前の土曜日だったら、いろいろと準備もできたのだが、引っ越しを翌日に控えた土曜日となると引っ越しの準備もあるし、ただの引き渡しというだけになってしまう。初めは素早く対応してくれた業者だが、完成間近というか、カタのついてしまった仕事には、あまり熱心ではなくなるのであろうか? 土曜日、引き渡しのため、家にいった。工事中の日曜日に何回か見に来たことはあるが、完成したものを見るのは初めてである。鍵を開け、家の中に入り、1階のLDKに入るとあまりの美しさに感動した。人工大理石のワークトップと白い木目調の扉のシステムキッチンは、イタヤカエデの美しいフローリングと美しいハーモニーを奏でていた。ダイニングと和室の間にあった壁は取り払われ、一本の柱と筋交いだけになり、デザイン性を感じさせる造りになっていた。予算の都合で、古めかしい部分は残るが、予想以上の出来栄えで、これなら妻も満足するだろうと思った。 部屋を見回していると、リフォーム業者の担当者がやってきた。リフォーム個所を見ていき、彼が廊下からLDKに入るドアにキズのあるのをみつけ、後日交換しますといった。キズ自体は大したことはなかったのだが、新品でキズのあるものを、そのままにしておくことは、良心が許さなかったのだろう。それ以外は問題なく、請求書を受け取り、リフォームは終わった。 業者の帰った後、家の中を見て回った。しかし、自分の家だという実感はまるでわいてこないかった。パートで年収も200万円前後の僕が家を買えるなんて、不思議な気がした。二階に上がり、ベランダに出て外の景色を見回した。静かな喜びが胸に広がっていった。(2016.10.5) |