12.期待と不安 ショールームを見学してから一週間後、正式にF産業と契約をした。そのとき、妻は今までは予定になかったトイレの交換を言い出した。さらに和室から洋室に変えるにあたり、廊下と洋室を分ける敷居だけが段差になってしまうため、それを解消する工事を追加することにした。後日、それらを含めた見積もりが出て、それは税抜きでぴったり300万円となっていた。したがって総額は324万円ということになる。 予算オーバーとなったわけだが、オーバーした24万円は妻が支払うとことになった。家を買ったということで、いくらかわからないが、ペルーの実家から援助が出たらしい。僕としては、あまり援助を受けたくなかったが、妻の実家の方としては、遠く離れている娘の力になりたいという気持ちから出たことなので、ありがたく受けることにした。しかし、300万円の壁を突破したことにより、歯止めが効かなくなり、この後、ずるずると金額は増えていくことになる。 それは、やはり家を買ったという心理状態が大きく影響したと思う。賃貸であれば、照明器具やエアコンがついていれば、よほどの不具合のない限り、それを自ら交換するということはない。しかし、自分の家となると、何もかも新品にしたくなるのである。さらに、家を買うのには大きなお金が動くため、金銭感覚が変わってくる。それまでは、千円単位で気を使っていたのに、家という数百万から数千万円単位の買い物をすると、気が大きくなり、数十万円くらいなんでもないように思えてくる。もちろん、家を買ったからといって、うちの経済状態がよくなるなどということはないから、早く修正しないと、この金銭感覚の狂いは、いつか跳ね返ってくる。 やっと、あとはリフォームの完成を待つという状態になったが、不安な気持ちは変らなかった。どのような出来上がりになるのか、わからないからだ。こちらの要望を伝え、業者はそれを踏まえて工事するのだから、それほどイメージとかけ離れたものにはならないだろうが、完成するまではわからない。 工事が始まって一週間後、代金の手付金を払うため、久しぶりに購入した家を訪れた。家の中に入ると、すでに解体が始まっていて、古いキッチンは取り払われ、リフォームを行わない床や壁には養生がされていた。家の中を見回していると、リフォーム会社の担当者がやってきた。前金の24万円を支払い終えた後、給湯器の話になった。 担当者によると、いつのものかわからず、できれば取り替えた方がいいという。給湯器に関しては、僕も心配だった。不動産店の担当者とみたときも、いつのものかわからず、かといって家が建てられた当時のものがそのまま残っているという感じでもなく、一度くらいは取り替えているのではないかということになっていた。ここにきて、さらなる出費はいたいが、壊れるのは時間の問題だと思い、替えることにした。 取り替えることにするので、給湯器の価格も見積もりに入れておいてほしいというと、担当者はウチで発注してもいいが、ネットで注文して送ってくれた方がはるかに安くなるという。何でも以前に、給湯器の交換を行ったところ、そのオーナーからお宅の給湯器の価格は高すぎる、ネットでみたらもっと安かったとクレームをつけられたことあったそうだ。まるでぼったくりのような言われ方としたと思いだす度に頭にくるらしい。Kさんに限ってそういうことはないと思うが、ネットの価格には全然かなわないので、型番を教えるので自分で買って、ここに届くようにしてもらった方がはるかに安くなるといわれ、そうすることにした。 この給湯器、定価は31万円、それをF産業で購入すると13万円、ネットの最安値は5万円だった。最安値はオークションの出品で、やや不安があったので、ネットの給湯器専門店で7万円で購入した。この価格をみると、定価とは何だろうと思ってしまう。(2016.9.9) |